まず結論:この研究から言えること
Kellgren-Lawrence分類グレードI・IIの膝変形性関節症患者240人を12か月調べた研究では、標準化したPRP治療の流れは、医師が通常どおり行うPRPケアより、痛みや膝の機能の改善と満足度で良い結果でした。ただし、PRPそのものの効果や、流れの中の各要素の効果までは確認できません。
そもそも、どんな問題なのか?
変形性膝関節症は、膝の痛みや動かしにくさが起こる病気です。この研究では、血小板を多く含む血液の成分を使う治療であるPRP(多血小板血漿)の結果が、研究によって一致していない点に注目しました。
研究の目的は、PRPの選び方や品質管理、注射の方法、リハビリ、経過確認をあらかじめ決めた「標準化PRP経路」が、医師の判断で行う通常のPRPケアより良い結果につながるかを比べることでした。
今回の研究では何を調べたのか?
この研究は、前向き多施設二重盲検ランダム化比較試験です。前向きはこれからの経過を追う研究、多施設は三つの病院で行う研究、ランダム化比較試験は参加者をくじ引きのように分けて比べる研究です。二重盲検は、参加者と評価する側が、どちらの治療を受けたか分からないようにする方法です。
対象は、Kellgren-Lawrence分類グレードI・IIの膝変形性関節症患者240人でした。この分類は、膝の画像で変化の程度を表す基準です。参加者は、標準化PRP経路群120人と、医師が判断する通常のPRPケア群120人に分けられ、12か月追跡されました。
標準化PRP経路では、治療対象者の選び方、白血球を少なくしたPRPの品質管理、超音波で位置を確認しながら行う注射、段階的なリハビリ、定期的な経過確認を組み合わせました。比較群では、医師が通常の方法でPRPケアを行いました。
評価したのは、痛み、膝の状態や機能、臨床的に意味のある最小の変化(評価尺度上で臨床的に意味があるとされる最小の変化)に達したか、満足度、有害事象、費用です。痛みはVAS(痛みの程度を数字で表す尺度)、膝の状態はWOMAC総合点とIKDC(膝の状態や機能を評価する尺度)で調べました。
何がわかったのか?
12か月後、標準化PRP経路群は通常のPRPケア群より、痛みの改善が2.98点大きくなりました。差は−2.98(95%信頼区間−3.64〜−2.32、P<.001)でした。95%信頼区間は、研究結果の不確かさの範囲を示します。P値は、差がないと仮定した場合に、今回以上の差が得られる確率を示す統計値です。
WOMAC総合点の改善は標準化PRP経路群で8.63点大きく、IKDCの改善は10.25点大きくなりました。いずれもP<.001でした。日常生活では、痛みや膝の状態、膝の機能について、標準化PRP経路群のほうが良い変化を示したという意味です。
臨床的に意味のある最小の変化に達した割合は、痛みでは3、6、12か月、IKDCとWOMACでは6、12か月で、標準化PRP経路群のほうが高くなりました。
満足度は標準化PRP経路群のほうが高く、オッズ比は1.79(95%信頼区間1.11〜2.89、P=.017)でした。オッズ比は、満足度に関する結果の違いの大きさを表す統計値です。
有害事象は、標準化PRP経路群で115人中17人(14.8%)、通常のPRPケア群で113人中36人(31.9%)に起こりました。標準化PRP経路群のほうが少なく、P=.003でした。
平均費用は、標準化PRP経路群が15,199.9中国元、通常のPRPケア群が14,754.4中国元でした。費用対効果の指標は、WOMACの1点あたり66.0中国元でした。
私たちの生活・リハビリにどう関係する?
この研究では、PRP注射だけでなく、治療対象の選び方、品質管理、超音波を使った注射、段階的なリハビリ、定期的な経過確認をまとめた流れが調べられました。標準化した流れの群では、12か月後の痛みや膝の機能、満足度が、通常のPRPケア群より良い結果でした。
ただし、この研究だけでPRPそのものが効くことや、どの要素が結果に関係したかは分かりません。PRPやリハビリが自分に合うか、費用や安全性をどう考えるかは、膝の状態を確認したうえで主治医に相談してください。
研究でまだわからないこと
この研究では、複数の要素を一つの治療の流れとして調べています。そのため、PRPの品質管理、注射方法、リハビリ、経過確認など、それぞれの効果を分けて判断できません。
また、プラセボ群(実際の治療成分を含まない比較群)がありませんでした。そのため、PRP自体の有効性を確立する研究ではありません。
対象は、Kellgren-Lawrence分類グレードI・IIの膝変形性関節症患者です。別の重症度の人や、研究対象と異なる人に同じ結果が当てはまるかは、このAbstractだけでは分かりません。Abstractだけでは、これ以外の詳しい限界を確認できません。
この情報だけで個別の診断や治療を決めることはできません。治療を検討する場合は、主治医にご相談ください。
Yoリハ 佐藤院長の視点
論文の結果を一人ひとりにそのまま当てはめるのではなく、診察と動きの評価を組み合わせて考えることが大切です。
開院後のYoリハでは、次のような検査や治療を予定しています。Yoリハビリ整形外科かわなでは、開院後、専門医が適応を判断し、採血した血液からPRPを院内で調製する自費診療を予定しています。PRPありきではなく、画像所見や体の機能、これまでの治療を確認し、必要に応じてリハビリも組み合わせます。詳しくは「PRP治療」をご覧ください。
Yoリハビリ整形外科かわなは2027年4月1日の開院を予定しており、現在は診療・予約を開始していません。
参考文献
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Clinical Pathway Management for Platelet-Rich Plasma Therapy in Kellgren-Lawrence Grade I and II Knee Osteoarthritis: A Prospective, Multicenter, Double-Blind Randomized Controlled Trial.
PMID: 42929654
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42929654/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

