膝蓋大腿痛に対するHILTは痛みを減らせるか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:膝蓋大腿痛に対するHILTは痛みを減らせるか?
  • 英語タイトル:Efficacy of high-intensity laser therapy for patellofemoral pain: a systematic review and meta-analysis.

ここで取り上げる内容は、リハビリテーション科や整形外科の外来でよく問題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、そのつど「英語の正式名称」と「日本語での意味」を説明しながら、できるだけ日常会話に近い形でお話ししていきます。

目次

研究の背景・目的

「膝蓋大腿痛(しつがいだいたい痛)」というのは、膝のお皿(膝蓋骨:しつがいこつ)と太ももの骨(大腿骨:だいたいこつ)のあいだあたりに出る痛みのことで、英語では「patellofemoral pain(パテロフェモラルペイン)」と呼ばれます。
若い方から中年の方までの「前側の膝の痛み」の原因としてよくみられるタイプです。
近ごろ、この膝蓋大腿痛に対して「高出力レーザー治療(High-Intensity Laser Therapy:ハイインテンシティ・レーザー・セラピー、略称HILT)」という、強めの出力のレーザーを使った物理療法が痛みを和らげるのではないかと注目されています。
この研究は、「HILTが本当にどのくらい痛みを減らせているのか」を、今までの研究をまとめて調べることを目的としています。

調査の方法(対象など)

この研究は、「ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:ランダマイズド・コントロールド・トライアル、略称RCT)」だけを集めて分析しています。
ランダム化比較試験というのは、患者さんをくじ引きのような方法でグループに分けて、ある治療をするグループとしないグループを比べる研究方法で、治療の効果を調べるときによく使われます。
こうしたRCTを集めて、決まった手順でまとめて評価する方法を「システマティックレビュー(systematic review:システマティック・レビュー)」と呼び、さらに数値として統合して効果の大きさを計算することを「メタ解析(meta-analysis:メタアナリシス)」といいます。
今回のシステマティックレビューとメタ解析では、HILTをほかの治療と一緒に行ったグループ(HILT併用群)77例と、HILTを行わなかったグループ(対照群)92例を対象とした、合計4つの試験の結果がまとめられています。

研究の結果

いちばん大事な評価項目として、「痛みの強さ」が比べられました。
その結果、HILTを併用したグループのほうが、HILTをしていないグループよりも、統計学的に意味のある形で痛みが少なくなっていました。
効果の大きさは「標準化平均差(Standardized Mean Difference:スタンダダイズド・ミーン・ディファレンス、略称SMD)」という指標で表されます。これは、いろいろな痛みの尺度を共通の物差しにして、どれくらい差があるかを示す方法です。
治療が終わった直後のSMDは-0.66で、「中等度(ほどほどの大きさ)」の効果量とされています。
その後のフォローアップ(follow-up:フォローアップ、一定期間たってからの再評価)の時点ではSMDが-1.08で、「大きな効果量」とされる範囲に入っていました。
一方で、「Kujalaスコア(クジャラ・スコア)」という、膝蓋大腿痛の患者さんの機能(階段の上り下りやしゃがみ込みなど、膝の使いやすさ)を点数化した指標などの機能面の評価では、HILTをしたグループとしなかったグループのあいだに、統計学的に意味のある差はみられていません。

結論:今回の研究でわかったこと

今回まとめられた研究結果からは、「HILTをほかの治療と一緒に行うことで、膝蓋大腿痛が中等度以上のレベルで減る可能性がある」と考えられます。
ただし、この結論をどれくらい信頼してよいかを示す「エビデンスの確実性」は「非常に低い」と評価されています。エビデンスというのは、医学的な根拠のことで、研究の質や症例数などを総合して判断されます。
そのため、HILTは「運動療法(exercise therapy:エクササイズ・セラピー、筋力トレーニングやストレッチなどを中心とした治療)」の補助として、慎重に取り入れていくという考え方が、現時点では妥当とされています。

実際の診察ではどう考えるか

HILTについての研究は、まだ患者さんの数が少なく、結果の信頼性も「非常に低い」と評価されています。
ですので、実際の診察では、まずは膝蓋大腿痛の基本となる「運動療法」を治療の中心に据えることが大切です。
そのうえで、痛みが強くて運動療法を続けにくい場合などに、HILTを「痛みをやわらげるための補助的な選択肢のひとつ」として位置づける、という姿勢が望ましいと考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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