まず結論:この研究から言えること
中部アキレス腱症の成人192人では、高容量注射は偽注射と比べて、12か月後の痛みや機能低下を明らかに改善しませんでした。ステロイド入りは6週ではよい結果でしたが、26週ではステロイドなしより悪い結果でした。詳しい限界はAbstractだけでは確認できません。
そもそも、どんな問題なのか?
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉と、かかとの骨をつなぐ腱です。中部アキレス腱症は、かかとに近い部分ではなく、腱の中央付近に痛みや不調が起こる状態です。歩く、走る、階段を上るといった動作に影響することがあります。
この研究では、腱の周りに多めの液体を注射する「高容量注射」が役立つかを調べました。ステロイドは炎症などを抑える薬です。ステロイドを加えた場合と加えない場合を、偽注射と比べました。
今回の研究では何を調べたのか?
18歳以上で中部アキレス腱症と診断された成人192人を、三つのグループに無作為に分けました。偽注射は64人、高容量注射でステロイドなしは63人、ステロイドありは65人でした。
偽注射では、少量の局所麻酔薬を注射しました。高容量注射では、液体と局所麻酔薬を使い、ステロイドありのグループにはヒドロコルチゾン25mgも加えました。全員が同じ運動プログラム、説明、活動量を調整する助言を受けました。
参加者と評価する人には、どの注射を受けたかを分からないようにしました。主な評価にはVISA-Aという、アキレス腱の痛みと機能低下を調べる質問票を使い、主な評価時点は52週でした。
何がわかったのか?
12か月後の痛みと機能低下は、ステロイドあり高容量注射と偽注射で明確な差がありませんでした。差は−3.5で、98.33%信頼区間は−12.0〜5.0でした。これは、研究結果の不確かさを示す範囲です。
12か月後の痛みと機能低下は、ステロイドなし高容量注射と偽注射でも明確な差がありませんでした。差は4.0で、98.33%信頼区間は−4.2〜12.3でした。
ステロイドあり高容量注射は、偽注射と比べて6週ではよい結果でした。差は9.2で、98.33%信頼区間は1.5〜16.9でした。一方、26週では、ステロイドなし高容量注射より悪い結果でした。差は−8.6で、98.33%信頼区間は−16.4〜−0.7でした。
費用対効果の分析では、ステロイドあり高容量注射は、偽注射と同程度の効果で、医療費は低い結果でした。質調整生存年(生活の質も考慮した生存期間)を基にした分析で、費用対効果が高い確率は、支払意思額がAUD50,000とAUD100,000の場合に、いずれも0.90を超えました。
研究に関係する重い有害事象は記録されませんでした。ただし、ステロイドあり高容量注射は、短期ではよい結果がみられた一方、より長い期間では悪い結果と関連していました。
私たちの生活・リハビリにどう関係する?
この研究からは、高容量注射が12か月後の痛みや機能低下を改善するとは言えません。ステロイド入りでは、6週の時点でよい結果がみられましたが、26週ではステロイドなしより悪い結果でした。
そのため、この研究の結果だけから、ステロイド入り高容量注射を routine(決まった方法として広く行うこと)で使うことは支持されません。運動や活動量の調整、注射を含む治療については、症状や体の状態を踏まえて主治医と相談してください。
この研究は、注射を受けるかどうかを個別に決めるものではありません。ご自身の診断や治療の判断は、主治医に確認してください。
研究でまだわからないこと
対象は、18歳以上で中部アキレス腱症と診断された成人192人です。そのため、この研究結果を、対象と異なる年齢や別の腱の病気にそのまま当てはめられるかは分かりません。
Abstractには、研究の詳しい限界は明記されていません。Abstractだけでは、ほかの詳しい限界を確認できません。
Yoリハ 佐藤院長の視点
論文の結果を一人ひとりにそのまま当てはめるのではなく、診察と動きの評価を組み合わせて考えることが大切です。
開院後のYoリハでは、次のような検査や治療を予定しています。腱の痛みでは、論文で扱われた治療が誰にでも合うとは限りません。Yoリハビリ整形外科かわなでは、診察と動きの評価を行い、リハビリや自費診療の体外衝撃波などを選択肢として個別に検討できる体制を準備しています。詳しくは「体外衝撃波治療」をご覧ください。
Yoリハビリ整形外科かわなは2027年4月1日の開院を予定しており、現在は診療・予約を開始していません。
参考文献
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Efficacy and cost effectiveness of high volume injections with and without corticosteroid compared with sham for midportion Achilles tendinopathy (Inject trial): randomised controlled trial.
PMID: 42951276
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42951276/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

