人工膝関節置換術後、歩行客観指標と患者自己評価は一致するか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:人工膝関節置換術後、歩行客観指標と患者自己評価は一致するか?
  • 英語タイトル:The association of objective gait measures with patient-reported outcome measures and physical performance following total knee arthroplasty: A systematic review.

ここでは、人工膝関節置換術(トータルニーアスロプラスティ:Total Knee Arthroplasty/TKA)を受けたあとに、
「患者さんご自身の自己評価」と「歩き方を客観的に測ったデータ」が、どのくらい一致しているのかをまとめた研究を紹介します。
ふだんリハビリテーションや整形外科の診察でよく出てくる内容ですが、専門用語はできるだけかみくだいてお話しします。

目次

研究の背景・目的

人工膝関節置換術(TKA)の手術後の状態を評価するときには、主に3つの方法があります。
1つ目は、患者報告アウトカム指標(Patient-Reported Outcome Measures:PROMs)といって、
「痛みはどのくらいか」「日常生活でどの程度困っているか」などを、患者さんご自身にアンケート形式で答えてもらう自己評価です。
2つ目は、3次元歩行解析(3D歩行解析)と呼ばれる方法で、センサーやカメラを使って、歩くときの膝の動きやスピード、歩幅などを立体的に詳しく測る検査です。
3つ目は、身体パフォーマンス(physical performance)といって、立ち上がりテストや一定距離の歩行テストなど、実際の動作能力を測る評価です。
ただし、これまでのところ、「患者さんの自己評価(PROMs)」と「3D歩行解析で得られる客観的な歩き方のデータ」が、どの程度結びついているのか、
また、それらが転倒のしやすさ(転倒リスク)とどのように関係しているのかは、はっきりとはわかっていませんでした。
この研究は、その点を整理して明らかにしようとしたものです。

調査の方法(対象など)

4つの医学データベースを使って、2025年4月までに発表された論文を検索しました。
その中から、人工膝関節置換術(TKA)を受けた患者さん372名を対象とした12本の研究を選び出しました。
それぞれの研究で使われていた、3次元歩行解析(3D歩行解析)の指標と、
患者報告アウトカム指標(PROMs)、および身体パフォーマンスの結果との関係を、
相関係数(どのくらい一緒に変化するかを0〜1の数字で表したもの)を用いて整理しました。

研究の結果

患者報告アウトカム指標(PROMs)と歩行の指標は、どちらも「良くなる方向」に動くという点では、おおむね同じ傾向がありました。
一方で、その結びつきの強さを示す相関係数は、研究によってr=0.0〜0.8と幅が大きく、
まったく関連が見られないものから、かなり強い関連があるものまでさまざまでした。
具体的には、変形性膝関節症の評価によく使われるWOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index:
膝や股関節の痛み・こわばり・日常生活動作のしにくさを質問票で評価する指標)と、歩幅との間には、ほとんど関連がみられませんでした。
一方で、OKS(Oxford Knee Score:膝の痛みや機能を質問票で評価する指標)と、
複合バイオメカニクス指標(歩行中の関節の動きや力のかかり方などを組み合わせた指標)との間には、強い関連がみられました。
なお、これらの歩行指標やPROMsと、転倒との関係を直接調べた研究は、今回の検討では見つかりませんでした。

結論:今回の研究でわかったこと

人工膝関節置換術(TKA)のあとでは、患者報告アウトカム指標(PROMs)の結果が良い人ほど、
歩行の指標も良くなる傾向はみられました。
ただし、その関連の強さを示す相関係数は0.0〜0.8と幅が広く、
「いつもはっきり一致している」とまでは言えず、一致の程度には限界があると考えられました。
そのため、PROMsだけでなく、歩行速度のような簡単に測れる客観的な歩行指標もあわせて評価することが、
術後の状態を把握するうえで役に立つ可能性があるとされています。

実際の診察ではどう考えるか

患者報告アウトカム指標(PROMs)だけでは、歩き方の細かい質やバランスの状態を、十分にとらえきれない可能性があります。
そのため、人工膝関節置換術(TKA)の手術後のフォローでは、
「どのくらいの速さで歩けるか(歩行速度)」や「一歩の長さ(歩幅)」といった、
外来でも簡単に測れる客観的な指標をあわせて確認していくことが大切と考えられます。
こうした指標を組み合わせることで、転倒のリスクや、まだ残っている機能の低下を、
比較的早い段階で把握できる可能性があり、今後のリハビリや生活指導の参考になると考えられています。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

  • かわな いりなか 八事エリア
  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

でのお身体のご相談は当院へ。

健康寿命・社会寿命を
最大限に延伸する

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次