慢性腰痛では理学療法と認知行動療法どちらを初期治療に選択すべきか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:慢性腰痛では理学療法と認知行動療法どちらを初期治療に選択すべきか?
  • 英語タイトル:Effectiveness of Nonpharmacologic Treatments for Chronic Low Back Pain : A Sequential, Multiple-Assignment, Randomized Trial.

このテーマは、リハビリテーション(理学療法などを用いた機能回復の医療)や整形外科の外来で、日常的によく問題になる内容です。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の診察室でお話しするような形で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

慢性腰痛(3か月以上続く腰の痛み)に対しては、薬を使わない治療(非薬物療法)がいくつか勧められています。代表的なものとして、
・理学療法(Physical Therapy:筋力トレーニングやストレッチ、姿勢・動き方の指導などを行うリハビリテーション)
・認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:痛みへの考え方や受け止め方、行動のパターンを見直す心理療法)
・マインドフルネス(Mindfulness:今この瞬間の体の感覚や呼吸に注意を向ける、瞑想に近い心のトレーニング)
などがあります。
ただ、「どの治療を最初に始めるのがよいのか」「もし効かなかった場合、次にどの治療へ切り替えるのがよいのか」といった、治療の順番についてのはっきりした研究結果は、これまであまりありませんでした。
この研究は、慢性腰痛の患者さんに対して、こうした非薬物療法をどの順番で行うのがよいかを調べることを目的としています。

調査の方法(対象など)

この研究では、慢性腰痛のある成人749人を対象にしました。複数の医療機関が協力して行った研究で、「多施設試験」と呼ばれます。
研究の方法は「逐次多重割り付けランダム化試験(Sequential, Multiple-Assignment, Randomized Trial)」という少し特殊なデザインです。これは、
まず最初に、患者さんをくじ引きのような方法(ランダム化)で、
・理学療法(Physical Therapy)を受けるグループ
・認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy)を受けるグループ
の2つに分けて治療を始めます。
その後、ある時点で「治療にうまく反応していない(非レスポンダー)」と判断された方については、再度ランダムに、
・別の種類の治療へ切り替える(スイッチする)
・マインドフルネス(Mindfulness)による介入を受ける
といった形で治療方針を振り分け直しました。
そして、最初の治療開始から約1年間(52週間)にわたって、腰の機能や痛みの程度がどう変化するかを追いかけて調べました。

研究の結果

治療を始めて10週がたった時点で、日常生活のしやすさなどを数値化した「機能障害スコア」という指標を比べました。
その結果、理学療法(Physical Therapy)を受けたグループのほうが、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy)のグループよりも、平均で2.8ポイントだけ良い(機能障害が少ない)という結果でした。
ただし、研究の世界では、患者さんにとって「はっきりと意味がある差」とみなす目安を6ポイントとしており、今回の2.8ポイントの差は、その基準には届きませんでした。
また、痛みの強さを数値で表した「疼痛スコア」については、2つのグループの間に明らかな差はみられませんでした。
さらに、最初の治療であまり良くならなかった方(非レスポンダー)について、
・別の治療に切り替えた場合
・マインドフルネス(Mindfulness)の介入を行った場合
を比べて、1年(52週)まで経過をみましたが、機能障害スコアや疼痛スコアのどちらについても、はっきりした差は示されませんでした。

結論:今回の研究でわかったこと

この研究の結果から、慢性腰痛の治療を始めるときには、理学療法(Physical Therapy)を少し優先して選ぶ考え方もありうるとされています。ただし、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy)との違いは大きくはなく、患者さんにとっての実感として大きな差とまでは言えない可能性があります。
そのため、どの治療法が一番かを決めつけるというよりは、効果が科学的に確かめられている非薬物療法を、できるだけ早い段階から始めて、続けていけるように支えていく姿勢が大切だと考えられます。

実際の診察ではどう考えるか

実際の診察では、慢性腰痛の最初の治療として、理学療法(Physical Therapy)を少し優先して検討することはあります。ただし、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy)やマインドフルネス(Mindfulness)など、他の非薬物療法も選択肢として大切です。
患者さんごとに、
・どの治療なら通いやすいか(アクセスのしやすさ)
・どの治療に興味があるか、続けやすそうか(嗜好)
といった点を一緒に相談しながら、いくつかの方法を組み合わせていくことが現実的です。
大事なのは、「早めに治療を始めること」と、「無理のない形で続けられる体制を整えること」であり、その中で理学療法・認知行動療法・マインドフルネスなどを柔軟に選んでいくことが重要だと考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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