肩の労災障害で統合ケアパスは復職を早めるか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:肩の労災障害で統合ケアパスは復職を早めるか?
  • 英語タイトル:Reducing Time Off Work Through an Integrated Care Pathway for Shoulder Injuries: Evidence from a Workers’ Compensation Cohort Study.

ここで取り上げるのは、肩を痛めて「労災(労働者災害補償保険:仕事中や通勤中のけが・病気を補償する公的保険制度)」の対象になった方の治療や復職(仕事への復帰)についての話です。
ふだんリハビリテーション科や整形外科でよく出てくるテーマですが、できるだけ専門用語をかみくだいてお話しします。

目次

研究の背景・目的

肩の労災障害は、けがが長引くことで長期間仕事を休まざるをえなかったり、「慢性疼痛(chronic pain:3か月以上続く長引く痛み)」につながったりしやすいとされています。
今までの「標準診療(standard care:通常行われている一般的な治療やリハビリ)」では、いつ・どのように仕事に戻るかという復職計画や、職場側との連絡・調整が十分でないことが多いと考えられています。
この研究では、「統合ケアパス(Integrated Care Pathway:医師・リハビリスタッフ・職場などがあらかじめ決めた流れに沿って連携しながら治療と復職支援を進める仕組み)」を使うことで、肩の労災障害の方の復職が早まるかどうかを調べることを目的としています。

調査の方法(対象など)

この研究では、労災保険を使って「肩の障害(shoulder injury:肩の筋肉・腱・関節などのけがや障害)」の補償を申請した労働者を対象にしています。
その方たちを、ふつうの治療を受けた「標準診療群」と、先ほどの統合ケアパスに沿って治療や復職支援を受けた「ケアパス群」の2つのグループに分けました。
そして、どの程度仕事に戻れたかという「復職レベル(return-to-work level:通常勤務か、仕事内容や時間を調整した勤務かなど)」と、それに関係しそうな要因を、「後ろ向き解析(retrospective analysis:すでに集まっている過去のデータをさかのぼって分析する方法)」で調べています。

研究の結果

ケアパス群では、「修正就労(modified work:仕事内容や勤務時間、負担を軽くするなど条件を調整して行う仕事)」への復帰のリスクが、標準診療群と比べておよそ1.8倍高いという結果でした。ここでいう「リスク」は、統計学的に「その状態になる起こりやすさ」を示す言葉です。
一方で、「12か月後の賃金補償日数(wage replacement days:労災保険から休業補償として支払われた日数)」は、標準診療群とケアパス群のあいだで大きな差はみられませんでした。
また、「通訳使用(interpreter use:診察や手続きのときに通訳が必要だったこと)」や、「長期申請(longer claim duration:労災の申請期間が長く続いていること)」などが、仕事への復帰がうまく進みにくい要因として関連していると考えられました。

結論:今回の研究でわかったこと

今回の結果から、肩の労災障害の方に統合ケアパスを導入すると、仕事内容や勤務条件を調整した「修正就労」への復帰が早まる可能性があると考えられます。
また、そのような支援を行っても、12か月後にみた「賃金補償日数」が長くなってしまう、つまり長期の休業補償が増えてしまうとは言えない可能性も示されています。
ただし、これはあくまでこの研究の範囲での結果であり、すべての方に同じように当てはまるとは限らない点には注意が必要です。

実際の診察ではどう考えるか

実際の診察では、肩の労災障害の方については、けがをしてから早い段階で「専門評価(specialist assessment:整形外科医やリハビリ専門職による詳しい診察・検査)」を行い、職場とも連携しながら、段階的に修正就労へ進んでいくプランを一緒に考えることが大切と考えられます。
また、「言語バリア(language barrier:日本語でのコミュニケーションが難しいこと)」がある方や、治療や申請の開始が遅れてしまった方については、早めに問題を見つけて介入することで、復職が進みにくくなるリスクをできるだけ減らすことが意識されます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

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