この記事の要点
- 日本語タイトル:首肩痛に層別化Blended理学療法は通常理学療法より有効か?
- 英語タイトル:Effectiveness of stratified blended physiotherapy versus usual physiotherapy for neck and shoulder pain: a cluster-randomized trial.
ここでは、首や肩の痛みに対するリハビリの方法について、最近の研究結果をもとにお話しします。
ふだん整形外科やリハビリテーション科で行われている治療の話ですので、専門用語はできるだけかみくだいて説明していきます。
研究の背景・目的
首や肩の痛みは、多くの方が経験する、とてもよくある症状です。
この研究では、まず患者さんの状態やリスクをいくつかのグループに分ける「層別化(そうべつか:症状の重さや回復の見込みなどでグループ分けする考え方)」を行い、
そのうえで「Blended理学療法(ブレンデッド・フィジオセラピー:対面での理学療法に、スマートフォンアプリなどのデジタルツールを組み合わせたリハビリ方法)」を使った治療が、
ふだん通りの「通常の理学療法(対面で行う一般的なリハビリ)」よりも首や肩の痛みに対してどのくらい効果があるのかを確かめることを目的としていました。
調査の方法(対象など)
この研究はオランダで行われました。
「プライマリケア(primary care:まず最初に受診する地域の診療所やクリニックなどの医療機関)」に通う患者さんを対象にしています。
研究の方法としては「クラスターRCT(cluster randomized controlled trial:医療機関や施設ごとにグループ分けをして、どちらの治療を行うかを無作為=ランダムに決める比較試験)」という手法が使われました。
具体的には、理学療法を行う施設ごとに、
・層別化Blended理学療法を行うグループ
・通常の理学療法を行うグループ
のどちらかに割り当てて、その結果を比べています。
研究の結果
この研究では、「主要アウトカム(main outcome:いちばん大事な評価項目)」として、
・痛みの強さ
・日常生活でどのくらい困っているかを示す機能障害のスコア(機能障害スコア:痛みのために動きにくい、家事や仕事がしづらいなどを点数化したもの)
を調べました。
その結果、層別化Blended理学療法を受けたグループと、通常の理学療法を受けたグループのどちらも、痛みや機能障害のスコアはよくなっていましたが、
その「よくなり方(改善の量)」はほとんど同じ程度でした。
また、「混合効果モデル解析(mixed-effects model:患者さんごとのばらつきや施設ごとの違いを統計的に調整して比較する方法)」という詳しい統計解析でも、
2つの治療法のあいだに「統計学的に有意な差(統計的に、はっきりと違いがあると言えるレベルの差)」は確認されませんでした。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究では、層別化Blended理学療法は、治療開始から9か月たった時点での
・痛みの改善
・機能障害(動きにくさや生活のしづらさ)の改善
について、通常の理学療法と比べて明らかな差はみられませんでした。
そのため、現時点では、首や肩の痛みに対しては、まず「標準的な理学療法(一般的に行われている対面でのリハビリ)」を、丁寧にしっかり行うことが基本になると考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
今回の結果からは、層別化Blended理学療法は、痛みや機能の改善について、通常の理学療法にくらべてはっきりとした「上乗せ効果(追加のメリット)」は示されませんでした。
そのため、診察の場では、まずは今まで通りの標準的な理学療法をきちんと行うことが大切だと考えられます。
一方で、アプリなどを組み合わせた治療は、通院のしやすさや費用とのバランスなども関係してきますので、
今後は「費用対効果(cost-effectiveness:かかる費用に対して、どれくらい効果が得られるか)」をしっかり検証していくことが重要になると考えられています。
参考文献
-
Effectiveness of stratified blended physiotherapy versus usual physiotherapy for neck and shoulder pain: a cluster-randomized trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42184713/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















