この記事の要点
- 日本語タイトル:変形性膝・股関節症患者に対するPT主導トリアージは安全で満足度の高いモデルか?
- 英語タイトル:In safe hands – patients with knee and hip osteoarthritis expectations and experience of physical therapist-led triage in a secondary care setting.
ここでは、変形性膝関節症・変形性股関節症といった、膝や股関節の「すり減り」による痛みで通院される方に関係するお話をします。
ふだんリハビリテーション科や整形外科の外来で行われている内容に近いテーマですが、できるだけ専門用語をかみくだいて、日常会話に近い形で説明していきます。
研究の背景・目的
背景:変形性膝関節症・変形性股関節症(英語名:knee and hip osteoarthritis/関節の軟骨がすり減って痛みや動かしにくさが出る病気)の患者さんが世界的に増えています。
そのため、整形外科の初診外来がとても混み合い、医師だけでは対応が追いつきにくい状況が出てきています。
そこで、「PT主導トリアージ」という仕組みを取り入れるかどうかが話題になっています。
ここでいうPTとは、理学療法士(英語名:Physical Therapist/運動や姿勢、歩き方などを専門的に評価し、リハビリテーションを行う国家資格の専門職)のことです。
トリアージ(英語名:triage)は、本来は救急の場面で使われる言葉で、「どの患者さんをどの順番で、どの診療に回すかを振り分けること」を指します。
この研究では、「理学療法士が中心になって患者さんを評価し、その後の診療の流れを振り分けるやり方は、安全で、患者さんにとって納得しやすい方法なのか」を知ることを目的としています。
調査の方法(対象など)
対象と方法:この研究はスウェーデンの整形外科外来で行われました。
そこでは、変形性膝関節症・変形性股関節症の患者さんが、まず理学療法士による「PT主導トリアージ」を受ける仕組みが導入されていました。
その仕組みを実際に受けた患者さん12人を対象に、「半構造化面接」という方法でお話を聞きました。
半構造化面接(英語名:semi-structured interview)とは、あらかじめ用意した質問をベースにしつつ、患者さんの話に合わせて自由に深掘りしていく聞き取り方法です。
集めたお話の内容は、「質的内容分析(英語名:qualitative content analysis)」という方法で整理しました。これは、患者さんの言葉を細かく読み取り、共通する考え方や気持ちをグループ分けして、どんなテーマが見えてくるかを探る分析方法です。
研究の結果
結果:患者さんの「期待」と「実際に受けてみた経験」を整理すると、2つの大きなテーマに分けられました。
1つ目は「In safe hands(安心して任せられる)」というテーマで、多くの患者さんが、理学療法士の専門性に対して信頼を感じていました。
ここでいう専門性とは、関節の動きや筋力、歩き方などを詳しくみてくれることや、運動療法(体操や筋力トレーニングなどを使った治療)に詳しいことを指します。
また、自分の症状や治療方針について、理学療法士と一緒に考えている感覚、つまり「意思決定に自分も参加できている」という気持ちを持った方が多くいました。
もう1つのテーマは「A care model in progress(発展途上のケアモデル)」で、一部の患者さんからは、「この先どんな流れになるのか」「手術や保存療法(薬やリハビリなど手術以外の治療)の選択肢がどうあるのか」といった点について、説明が十分ではなかったと感じたという声もありました。
つまり、全体としては安心感や信頼感がある一方で、「今後の診療の段取りや選べる治療の道筋を、もう少しはっきり教えてほしい」という意見も出ていた、という結果でした。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究から、理学療法士が中心となって行うトリアージは、多くの患者さんにとって「安心して任せられる」「自分も治療の話し合いに参加できている」と感じられる、将来性のあるモデルと考えられました。
一方で、診療の流れや治療の選択肢についての情報提供を、もっとわかりやすく、はっきり伝える工夫が必要であることも示されました。
つまり、PT主導トリアージは有望ではあるものの、患者さんへの説明の仕方や情報の出し方を整えていくことが大切だ、という結論です。
実際の診察ではどう考えるか
実際にPT主導トリアージを導入する場合には、いくつか事前にきちんと決めて、患者さんにもわかりやすく伝えておくことが重要と考えられます。
まず、「理学療法士がどこまで評価するのか」「どの部分は医師が最終的に判断するのか」といった評価の範囲や責任の分担を、はっきりさせておく必要があります。
次に、「最初にPTが診て、そのあと医師の診察になるのか」「リハビリを先に行うのか」など、受診の流れ(受診フロー)を、患者さんにも事前に説明しておくことが大切です。
さらに、手術療法(関節の手術を行う治療)と保存療法(薬、注射、リハビリ、生活指導など手術以外の治療)のどちらを選ぶかを決めていく過程で、患者さんがどう関わるのかも、あらかじめ共有しておくことが望ましいとされています。
こうした点を丁寧に説明することで、患者さんが「自分は今どの段階にいて、これから何が起こるのか」を理解しやすくなり、安心感や納得感につながると考えられます。
参考文献
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In safe hands – patients with knee and hip osteoarthritis expectations and experience of physical therapist-led triage in a secondary care setting.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42414961/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


