人工股関節全置換術後、段階的リハビリ看護は通常ケアより成績を改善するか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:人工股関節全置換術後、段階的リハビリ看護は通常ケアより成績を改善するか?
  • 英語タイトル:Phased rehabilitation nursing improves hip function, reduces complications, and enhances quality of life following total hip arthroplasty: A prospective quasi-experimental cohort study.

ここで取り上げるのは、整形外科の手術後リハビリでよく問題になるテーマです。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の外来でお話しするような形で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

「THA(Total Hip Arthroplasty:人工股関節全置換術)」は、変形性股関節症などの進行した股関節の病気に対して行う、標準的な手術治療です。
ただし、高齢の方や、糖尿病・心臓病など複数の持病(併存疾患)がある方では、手術のあとに行うリハビリテーション(機能回復のための訓練)がうまく進みにくいことがあります。
その結果として、痛みが長く続いたり、日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living、食事・トイレ・着替えなどふだんの生活動作)が落ちてしまったり、合併症(手術後に起こるトラブル)が増えることが問題になっています。
この研究では、「段階的リハビリ看護(手術後の経過に合わせて、あらかじめ決めた段階ごとにリハビリや看護を進めていく方法)」が、今までの通常のケアと比べて本当に有利なのかどうかを確かめることを目的としています。

調査の方法(対象など)

この研究は、中国の1つの病院だけで行われた「前向き準実験コホート研究(prospective quasi-experimental cohort study:あらかじめ計画を立てて患者さんを追いかけていくが、完全なランダム割り付けではない研究)」です。
初めて片側のTHA(片方の股関節だけの人工股関節全置換術)を受けた100人の患者さんを対象にしました。
患者さんは、入院している病棟ごとに、「段階的リハビリ看護」を受けるグループと、「通常のケア」を受けるグループに分けられました。
段階的リハビリ看護では、3つのフェーズ(段階)からなる決められたプロトコル(手順書)を、術後6か月間にわたって行いました。
そのうえで、痛み、股関節の機能、QOL(Quality of Life:生活の質、生活のしやすさや満足度)、合併症、治療への満足度を、手術後3か月と6か月の時点で評価しました。

研究の結果

手術から6か月たった時点で、段階的リハビリ看護を受けたグループは、通常のケアを受けたグループと比べて、痛みが少なく、股関節の動きや機能が良くなっていました。
また、合併症の起こる割合も低く、QOL(生活の質)や治療全体への満足度も高いという結果でした。
合併症の発生率は、段階的リハビリ看護のグループが2.0%、通常ケアのグループが16.0%と報告されています。
運動遵守率(医師や看護師から指示された運動をどれくらい守って行えたか)や満足度も、段階的リハビリ看護のグループで高い値でした。
さらに、Barthel Index(バーセルインデックス:食事・移動・トイレなどの日常生活動作を点数化した指標)と、自己管理能力(自分で病気や生活を管理する力)も改善しており、時間の経過とグループの違いによる影響(交互作用)も統計的に有意とされています。

結論:今回の研究でわかったこと

この研究から、段階的リハビリ看護は、THA(人工股関節全置換術)のあとに、痛みを和らげ、股関節の機能やQOL(生活の質)を良くし、合併症を減らすうえで役立つ可能性が高いと考えられます。
特に、高齢で持病が多い患者さんほど、手術のごく早い時期から、あらかじめ計画されたリハビリを組み込んでいくことに、より大きな意味があると示唆されています。

実際の診察ではどう考えるか

THA後の段階的リハビリ看護は、痛み、股関節の機能、QOL(生活の質)、合併症、治療への満足度といった点を、全体として改善しうる方法と考えられます。
一方で、この研究は1つの施設だけで行われた準実験的な研究で、対象となった患者さんの数も限られています。
そのため、自分たちの病院で取り入れる場合には、各フェーズ(段階)の内容をきちんと標準化し、実際に行いながら前向きに効果を検証していくことが大切になります。


参考文献

  • Phased rehabilitation nursing improves hip function, reduces complications, and enhances quality of life following total hip arthroplasty: A prospective quasi-experimental cohort study.

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42432916/


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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