腱板鏡視下修復後リハにデュアルタスクを加えると肩機能や痛みは改善するか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:腱板鏡視下修復後リハにデュアルタスクを加えると肩機能や痛みは改善するか?
  • 英語タイトル:Dual-Task Training Improves Shoulder Function and is Associated with Changes in Sensorimotor Network Connectivity After Arthroscopic Rotator Cuff Repair: A Randomized Controlled Trial.

このテーマは、肩の手術後のリハビリテーション(Rehabilitation、機能回復のための訓練)や、整形外科の日常診療でよく出てくる話題です。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の診察室でお話しするような形で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

【背景】ここでいう「腱板(けんばん)」は、肩の関節を安定させるための筋肉と腱(筋肉の先のスジ)の集まりのことです。
腱板を縫い合わせる「腱板修復術(Rotator Cuff Repair、傷んだ腱板を縫い直す手術)」のあとにどのように回復していくかは、単に腱がくっつくかどうかだけで決まるわけではありません。
痛みの強さや、「固有感覚(Proprioception、自分の手足が今どこにあるかを感じ取る感覚)」、
「センサーimotorコントロール(Sensorimotor Control、体の感覚情報をもとに筋肉をうまく動かす脳と神経の調整機能)」、
それから「動作への恐怖(Fear of Movement、動かすと痛くなるのではと不安になり、動かすのをためらってしまう気持ち)」など、いくつかの要素が影響すると考えられています。
この研究では、こうした要素に対して、リハビリのやり方を工夫することで変化が出るかどうかを調べています。

調査の方法(対象など)

【対象と方法】この研究は「単施設ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT、1つの病院で行われ、患者さんをくじ引きのように2つのグループに分けて治療効果を比べる研究)」という方法で行われました。
鏡視下腱板修復術(Arthroscopic Rotator Cuff Repair、小さな穴からカメラと器具を入れて行う腱板の手術)のあとにリハビリをしている患者さん72人を対象にしました。
この72人を、ふつうのリハビリだけを行う「通常リハ群」と、
「デュアルタスク群(Dual-Task Group、運動に加えて同時に頭を使う課題も行うグループ)」の2つに、無作為(ランダム)に割り付けて比較しました。

研究の結果

【結果】手術から18週後(およそ4か月半後)の時点で、デュアルタスク群のほうが、通常リハ群と比べて肩の機能を評価する「Constant-Murley Score(コンスタント・マーレイスコア、肩の痛み・動き・力などを点数化した評価法)」がより大きく改善していました。
また、「β-band weighted Phase Lag Index Network-Based Statistic difference」という、脳の「感覚運動ネットワーク(Sensorimotor Network、体の感覚と運動をつなぐ脳内のネットワーク)」のつながり方を数値で表した指標が低下しており、脳内のネットワークの結びつき方に変化があったことが示されています。
さらに、痛みの程度と「動作恐怖(動かすことへの怖さ)」も、デュアルタスク群のほうがより軽くなっていました。

結論:今回の研究でわかったこと

腱板の鏡視下修復術のあとに行うリハビリに、「認知課題(Cognitive Task、暗算など頭を使う課題)」を組み合わせた「デュアルタスク(Dual-Task、体を動かしながら同時に別の課題も行う訓練)」を加えると、
肩の機能や痛み、動作への恐怖が、通常のリハビリだけの場合よりもよくなる可能性があると示されています。
あわせて、脳の感覚運動ネットワークの結びつきにも変化が起きていることが示唆されており、脳と体の使い方が変わっている可能性が考えられます。

実際の診察ではどう考えるか

【臨床のヒント】手術後6週以降、主治医が安全と判断した範囲の運動の中で、暗算などの認知課題を同時に行う「デュアルタスク」をリハビリに取り入れる、という選択肢があります。
こうした方法で、肩の機能や痛み、動作への恐怖の改善をねらうことが考えられます。
実際に取り入れるかどうかは、手術の内容や腱の状態、痛みの程度などをふまえて、主治医やリハビリ担当者と相談しながら決めていくことになります。


参考文献

  • Dual-Task Training Improves Shoulder Function and is Associated with Changes in Sensorimotor Network Connectivity After Arthroscopic Rotator Cuff Repair: A Randomized Controlled Trial.

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42440059/


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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