FAIに対する股関節鏡手術後3か月リハビリでQOLや機能はどこまで改善するか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:FAIに対する股関節鏡手術後3か月リハビリでQOLや機能はどこまで改善するか?
  • 英語タイトル:Evaluating a 3-Month Physical Impairment and Functional Performance-Based Rehabilitation Program After Hip Arthroscopy for Femoroacetabular Impingement (FAI) Syndrome.

ここで取り上げる内容は、リハビリテーションや整形外科の外来でよく問題になるテーマです。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の診察でお話しするような形で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

「FAI(Femoroacetabular Impingement:大腿骨と骨盤の臼蓋〈きゅうがい〉の形の問題で股関節がぶつかりやすくなる状態)」に対して行う「股関節鏡手術(Hip Arthroscopy:小さな穴からカメラと器具を入れて行う股関節の内視鏡手術)」のあとに行うリハビリテーションは、病院や施設によって内容や回数がかなり違っています。
そのため、「どのくらいの期間・頻度でリハビリをすると、生活の質(QOL:Quality of Life)、筋力、関節の動く範囲(関節可動域)、動作のしやすさ(機能)がどこまで変わるのか」という点について、はっきりした根拠(エビデンス)がまだ十分ではありません。
この研究では、「3か月間の、体の状態(impairment:筋力や関節の動きなどの障害)と動作のしやすさ(機能)に着目したリハビリプログラム」が、その後6か月たった時点での結果にどのような影響を与えるかを調べることを目的としています。

調査の方法(対象など)

この研究は、「RCT(Randomized Controlled Trial:無作為化比較試験。患者さんをくじ引きのようにランダムに分けて治療法を比べる研究)」であるHIPARTI試験の一部として行われた「探索的コホート研究(Exploratory Cohort Study:ある集団を追いかけて経過を観察する研究)」です。
対象は18〜50歳のFAI患者さん29人で、「股関節鏡手術」と「シャム手術(Sham Surgery:実際の治療は行わず、手術を受けたように見せる比較用の手術)」を受けた方が含まれています。
手術後3か月間、理学療法士(Physical Therapist:運動療法などを専門とするリハビリの国家資格)が中心となってリハビリを行いました。患者さんには、週ごとの「トレーニング日誌」に、自分でリハビリを行った回数と、痛みの強さを「VAS(Visual Analog Scale:0〜10の線上で痛みの強さを数字で表す方法)」で記録してもらいました。
主な評価項目(主要アウトカム)は、手術から6か月たった時点での
iHOT-33(International Hip Outcome Tool-33:股関節の症状や生活のしやすさを患者さん自身が点数で答える質問票)と、股関節の動く範囲、筋力、そして片脚でのジャンプなどの機能テストでした。

研究の結果

トレーニング日誌をきちんと評価できたのは20人で、そのうち16人は「週2回以上リハビリを行う」という、あらかじめ決めていた目標(アドヒアランスターゲット:どれくらい続けられたかの目安)を達成していました。
リハビリ中の痛みは、VASで2未満(0〜10のうちかなり弱い痛み)におさまっており、許容できる範囲と判断されました。
手術から6か月たった時点では、iHOT-33の点数が平均で+18.6点上がっており、患者さん自身が感じる股関節の状態や生活のしやすさは大きく良くなっていました。また、股関節を曲げる動き(股関節屈曲)の可動域も、統計的に意味のある増加がみられました。
一方で、股関節を伸ばす動き(股関節伸展)や、内側・外側にひねる動き(内旋・外旋)、内ももの筋力(内転筋力)については、統計学的に有意な変化はみられませんでした。
片脚ホップ(片脚でのジャンプ)やサイドブリッジ(体幹と股関節の安定性を見る体幹トレーニング姿勢)などの機能テストでも、はっきりとした改善は示されませんでした。

結論:今回の研究でわかったこと

股関節鏡手術のあとに、3か月間、理学療法士が中心となってリハビリを行い、週2回以上しっかり続けられた場合、6か月後のiHOT-33は平均+18.6点と、患者さん自身が感じる股関節の状態は大きく良くなっていました。
一方で、筋力や機能テストの結果の変化は限られており、すべてが大きく良くなるわけではありませんでした。
そのため、痛みをできるだけ抑えながら続けられる運動を行い、患者さん自身が答える質問票(患者報告アウトカム:Patient-Reported Outcome Measures〈PROM〉)を重視して経過を見ていくことが、診療のうえで大事なポイントになると考えられます。

実際の診察ではどう考えるか

手術後3か月のリハビリで、「週2回以上続けられていて、運動中の痛みがVASで2未満におさえられている」ような状況であれば、iHOT-33は「臨床的に意味のある改善(患者さんにとって変化を実感しやすい改善)」を示すと考えられます。
ただし、筋力や機能テストの回復が、患者さんの自覚症状の改善と同じペースで進むとは限りません。
そのため、リハビリの効果を評価するときには、股関節に特化したPROM(股関節特異的PROM:股関節の状態を患者さん自身が答える質問票)を主な指標としつつ、患者さんごとの痛みの程度と「無理なく続けられるかどうか」を重視して、目標を一緒に決めていくことが大切になります。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

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