この記事の要点
- 日本語タイトル:凍結肩に対する関節モビライゼーションはどの手技が最も有効か?
- 英語タイトル:Comparative efficacy of different joint mobilization techniques in shoulder adhesive capsulitis: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
ここでは、いわゆる「四十肩・五十肩」とも呼ばれることがある「凍結肩(英語名:adhesive capsulitis、肩の関節包が固くなって動きが悪くなる状態)」についてお話しします。
リハビリテーションや整形外科の外来でよく問題になるテーマで、難しい専門用語も出てきますが、できるだけ日常の言葉でお伝えしていきます。
研究の背景・目的
凍結肩に対して、手術をしないで行う治療(保存療法)の中では、「非スラスト型関節モビライゼーション(英語名:non-thrust joint mobilization、関節をゆっくりと揺らしたり動かしたりして可動域を広げる手技で、ボキッと音を鳴らすような強い操作は行わない方法)」が大切とされています。
この研究では、その中でもよく使われる3つの方法、
・Mulligan法(英語名:Mulligan mobilization technique、関節を動かしながら、ずれを修正するように手で誘導していく手技)
・Maitland法(英語名:Maitland mobilization technique、関節を小さな範囲でリズミカルに揺らして、痛みや固さを和らげる手技)
・Kaltenborn法(英語名:Kaltenborn mobilization technique、関節を引き離す・ずらす方向にゆっくり持続的な力をかけて、関節包を伸ばしていく手技)
について、それぞれの効果にどのくらい違いがあるのかを比べて調べています。
調査の方法(対象など)
対象となったのは、肩の関節が固くなって動きが悪くなっている「肩関節拘縮(英語名:shoulder joint contracture、肩の関節包や周囲の組織が固くなり、動かせる範囲が狭くなった状態)」の患者さんです。
この患者さんたちを、いくつかの治療法にランダムに振り分けて比べる「ランダム化比較試験(英語名:Randomized Controlled Trial、RCT:治療法をくじ引きのように無作為に分けて、公平に効果を比べる研究方法)」だけを対象にしました。
英語で書かれた医学論文を系統的に探し出し、「非スラスト関節モビライゼーション(ボキッとさせないタイプの関節モビライゼーション)」同士をまとめて解析する「メタ解析(英語名:meta-analysis、複数の研究結果を統合して、全体としての傾向を調べる方法)」を行った研究です。
研究の結果
Mulligan法は、Maitland法と比べて、
・肩の外転(英語名:abduction、腕を体の横から外側・上の方へ挙げる動き)
・肩の外旋(英語名:external rotation、肘を体の横につけたまま、前腕を外側に開くようにひねる動き)
の可動域をより改善していました。
また、
・疼痛(英語名:pain、患者さんが感じる痛み)
・ADL障害スコア(英語名:Activities of Daily Living score、着替えや洗顔、髪をとかすなど、日常生活動作がどのくらい困っているかを数値で表したもの)
についても、Maitland法よりMulligan法の方がよく改善していました。
Kaltenborn法では、肩の後ろ側から行う「後方アプローチ(英語名:posterior approach、肩関節を後ろ側から操作する方法)」の方が、前側から行う「前方アプローチ(英語名:anterior approach、肩関節を前側から操作する方法)」よりも、肩の外旋可動域をよく改善していました。
ただし、これらの結果を支えている科学的な信頼度(エビデンスの確実性)は、「very low(非常に低い)」と評価されており、はっきりと言い切れる段階ではないとされています。
結論:今回の研究でわかったこと
今回まとめられた研究では、Mulligan法はMaitland法と比べて、
・肩の外転と外旋の動き
・痛み
・日常生活動作(ADL)の障害
をより改善しているという結果でした。
一方で、その根拠となるエビデンスの確実性は「非常に低い」と評価されており、どの患者さんにも必ず当てはまるとまでは言えない状況です。
そのため、現時点では、Mulligan法と、外旋可動域の改善が期待できる「後方アプローチのKaltenborn法」を、どちらも候補として考え、患者さんの状態に合わせて柔軟に選ぶ姿勢が妥当とされています。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診察やリハビリの場面では、Mulligan法は、肩の外転・外旋の動きや痛み、日常生活動作(ADL)の障害を改善するための有力な候補の一つとして考えられます。
一方で、肩の外旋の可動域を特に重視したい場合には、後ろ側から行うKaltenborn法(後方アプローチ)を選択肢とすることもあります。
どの方法を選ぶかは、患者さんそれぞれの症状や体の特徴、これまでの治療歴に加えて、実際に手技を行う医療者の経験や得意分野(術者の熟練度)などを総合的に考えながら、個別に使い分けていくことになります。
参考文献
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Comparative efficacy of different joint mobilization techniques in shoulder adhesive capsulitis: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42446287/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


