まず結論:この研究から言えること
明らかな頚椎変形を伴わない頚椎症患者130人を調べた、二施設で行った一つの横断研究です。画像でみる首の骨の並びだけでは、本人が感じる首の痛みを十分に説明できませんでした。心の症状を調べる質問票SCL-27の一部は痛みと関連しましたが、この関連がすべての患者に当てはまるかは、さらに確認が必要です。
そもそも、どんな問題なのか?
この研究は、首の痛みの強さに何が関係するかを調べたものです。首の骨の並びだけでなく、気分や体の症状の感じ方など、心理面も含めて検討しました。
対象は、明らかな頚椎変形を伴わない頚椎症の患者さんです。頚椎症は、首の骨やその周囲に変化が起こる状態です。研究では、立った状態のX線画像でみる「矢状面バランス」(体を横から見たときの首の骨の並び)と、心理状態が首の痛みとどう関係するかを調べました。
その結果、首の骨の並びだけでは、患者さんが感じる痛みを十分に説明できませんでした。一方、SCL-27という心の症状を調べる質問票の一部は、痛みの強さと関連していました。ただし、これは関連を示したもので、心理状態が痛みの原因だと証明したものではありません。
今回の研究では何を調べたのか?
前向きに集めたデータを使った、二つの施設での横断研究です。横断研究とは、ある時点の状態を調べ、要因どうしの関連をみる研究です。対象は、明らかな頚椎変形を伴わない頚椎症患者130人でした。
頭蓋頚椎移行部の病気、腫瘍、変形、脊髄の病気、感染症などがある人は対象から除かれました。立った状態のX線画像がない場合や、画像を評価できない場合も除外されました。
介入や治療を行った研究ではありません。首の痛みの強さが異なる患者さんのグループを比べました。評価したのは、首の痛み、心理状態、首の骨の並びです。心理状態はSCL-27(心の症状を調べる質問票)と、複数の心理質問票で調べました。
首の痛みはVAS(痛みを数字で表す評価)で評価しました。VASは、数字が大きいほど痛みが強いことを示します。
何がわかったのか?
重度の首の痛み(VASが7以上)の患者さんでは、C1-C2前弯(首の上の部分の骨のカーブ)が有意に高くなっていました。ただし、これは痛みの強さと画像上の特徴に差があったという結果で、C1-C2前弯が痛みを起こしたと示すものではありません。
中等度以上の首の痛み(VASが4以上)では、SCL-27の抑うつ気分、身体症状、広場恐怖、社会恐怖、全体的な指標であるGSI、およびC1-C2前弯に有意な差がありました。これらは、痛みの強さが異なるグループで、評価結果に差がみられたという意味です。
首の痛みとSCL-27の抑うつ気分の関連は、正の相関でした。首の痛みとSCL-27の身体症状の関連も、正の相関でした。相関とは、二つの値が一緒に変化する傾向を示すもので、原因と結果を示すものではありません。
首の痛みとC1-C2前弯の関連は、逆相関でした。つまり、この研究では一方が高いときに、もう一方が低い傾向がみられました。
複数の項目を同時に調べた影響を調整した後も、首の痛みとSCL-27の身体症状、抑うつ気分、GSIスコアの関連は有意でした。一方、C1-C2前弯との関連は有意ではなくなりました。有意とは、偶然だけでは説明しにくい差や関連として、統計上の基準を満たしたという意味です。
以上から、この対象者では、首の骨の矢状面バランスだけでは、本人が感じる首の痛みを十分に説明できませんでした。
私たちの生活・リハビリにどう関係する?
この研究からは、首の痛みを考えるとき、X線画像だけでなく、気分や体の症状の感じ方なども確認することが役立つ可能性があります。特に、手術前の確認や、患者さんごとに説明を考える際に、SCL-27のような心理評価が役立つ可能性が示されました。
ただし、この研究は治療を比べたものではありません。心理評価を行えば痛みが改善する、または特定の治療が優れているとまでは言えません。痛みの原因や治療、リハビリの内容は、症状や診察結果を踏まえて主治医に相談してください。
研究でまだわからないこと
対象は、明らかな頚椎変形を伴わない頚椎症で、特定の病気や画像を評価できない場合を除いた患者さん130人です。そのため、変形を伴う人、腫瘍や感染症などがある人、今回の対象とは異なる人に、同じ結果が当てはまるかはわかりません。
また、Abstractには研究の詳しい限界が明記されていません。横断研究のため、長期的な変化や治療の影響は判断できません。
Yoリハ 佐藤院長の視点
論文の結果を一人ひとりにそのまま当てはめるのではなく、診察と動きの評価を組み合わせて考えることが大切です。
開院後のYoリハでは、次のような検査や治療を予定しています。肩こり外来では、首や肩の病気が隠れていないかを診察し、姿勢や動作、筋力、呼吸、肩甲骨の動きを個別に評価する予定です。診断とリハビリを軸に、必要に応じて自費診療の体外衝撃波などの選択肢も検討します。詳しくは「肩こり外来」をご覧ください。
Yoリハビリ整形外科かわなは2027年4月1日の開院を予定しており、現在は診療・予約を開始していません。
参考文献
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A comprehensive analysis of the association of psychological profiling and sagittal balance parameters with neck pain in a non-deformity cervical spondylosis population: A prospective two-centers cross-sectional study.
PMID: 42894039
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42894039/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

