スマホで膝の曲がり具合は正確に測れる?健常成人で検証

目次

まず結論:この研究から言えること

健常成人15人で、スマートフォン1台の動画から膝の曲がり具合を測る方法を調べました。スクワットでは比較的よく一致しましたが、立ち上がりや片脚立位では一致の程度が異なりました。測定できない場合もあり、診察で使う測定器の代わりになるとはいえません。

そもそも、どんな問題なのか?

この研究では、スマートフォンの横向き動画から、膝の曲がり具合を推定する方法を調べました。体の関節の位置を、動画上で自動的に読み取る技術です。特別な目印を体に貼らずに測れるため、利用しやすい可能性があります。

ただし、動作の種類や膝の角度、動画から関節を正しく読み取れたかどうかで、結果が変わることがあります。研究では、スクワット、いすからの立ち上がり、両側の片脚立位を行い、膝の角度を別の方法と比べました。

今回の研究では何を調べたのか?

健常成人15人を対象にした検証研究です。検証研究とは、ある測定方法が別の基準となる方法とどの程度一致するかを調べる研究です。

参加者は、横からスマートフォンで撮影されながら、スクワット、いすからの立ち上がり、片脚立位を行いました。静止した状態では、30度、60度、90度、120度の膝の曲がり具合を設定しました。

スマートフォン動画からの推定値を、角度計で設定した静止時の角度や、動画を人が確認して記録した値と比べました。評価者どうしの一致度も調べました。さらに、4人について21日から29日後に再検査し、同じ結果になりやすいかを探索的に調べました。

何がわかったのか?

一致度は、測定方法どうしがどの程度似た結果を示したかを表す指標です。動作中の測定は、210回の観測のうち177回(84.3%)で利用できました。33回(15.7%)は、画像から関節を読み取る信頼度の基準を満たしませんでした。

スクワットでの一致度を示すICC(測定結果の一致の程度を表す統計値)は0.773(95%信頼区間0.564〜0.875)でした。立ち上がりでは0.632(0.455〜0.726)、片脚立位では0.136(-0.078〜0.482)でした。つまり、動作によって一致の程度が異なり、片脚立位では一致が低い結果でした。

静止した膝の角度では、設定した角度との一致度を示すICCは0.874(0.770〜0.953)でした。

動画を人が確認して角度を記録した場合の評価者間ICCは0.999(0.998〜0.999)でした。これは評価者どうしの記録がよく一致したことを示しますが、三次元の正確な動きを測れることを示すものではありません。

私たちの生活・リハビリにどう関係する?

この研究からは、条件をそろえて撮影し、毎回その動画で測定できるかを確認すれば、スマートフォン動画が膝の動きを確認する補助になる可能性が示されました。特にスクワットでは、一定の一致度が確認されました。

一方で、測定できない動画があり、動作によって結果も変わりました。この研究だけでは、治療の効果や他の方法より優れていることは判断できません。診断や治療、細かな経過判断に使うかどうかは、主治医や担当の医療者に相談してください。

研究でまだわからないこと

再検査の分析は4人だけで行われた探索的な評価です。そのため、同じ結果が多くの人で得られるかは、まだわかりません。

対象は健常成人15人でした。臨床集団や、別のスマートフォンでも同じ結果になるとは、この研究からはいえません。

この方法が、診察で使う角度計による測定の代わりになること、精密な長期的判断に使えること、三次元の動きを絶対的に正確に測れることも支持されませんでした。Abstractだけでは、これ以外の詳しい限界は確認できません。

この説明は研究結果の範囲に基づくもので、個別の診断や治療を決めるものではありません。

Yoリハ 佐藤院長の視点

論文の結果を一人ひとりにそのまま当てはめるのではなく、診察と動きの評価を組み合わせて考えることが大切です。

開院後のYoリハでは、次のような検査や治療を予定しています。あし外来・くつ外来では、米国式足医療の考え方を踏まえ、足の形だけでなく、歩き方、姿勢、普段の靴まで確認する予定です。歩行・姿勢・足底圧の解析結果を、リハビリや靴の調整、オーダーメイドインソールの設計と再評価に役立てる予定です。詳しくは「あし外来・くつ外来」をご覧ください。

Yoリハビリ整形外科かわなは2027年4月1日の開院を予定しており、現在は診療・予約を開始していません。


参考文献

  • Validation of Single-Camera MediaPipe BlazePose for Knee Joint Angle Measurement Across Multiple Functional Tasks: Concurrent Validity, Interrater Reliability, and Exploratory Test-Retest Reliability Study.
    PMID: 42976294

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42976294/


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 日本整形外科学会 認定スポーツ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会
  • 日本再生医療学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

CLINIC & ACCESS

Yoリハビリ整形外科かわな

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