この記事の要点
- 日本語タイトル:腰椎分離症の中高生は安静優先か早期リハで背筋萎縮は変わるか?
- 英語タイトル:Timing of Physical Therapy and Lumbar Muscle Atrophy in Adolescent Athletes With Spondylolysis.
ここでは、スポーツをしている中高生に多い「腰椎分離症(ようついぶんりしょう:腰の骨の一部にヒビが入る状態)」について、安静を優先した方がよいのか、それとも早めにリハビリを始めた方がよいのかを扱った研究を紹介します。
専門的な内容も出てきますが、できるだけ日常の診察でお話しするような言葉で説明していきます。
研究の背景・目的
中高生のアスリートがなる腰椎分離症では、まずは運動を休んで「安静にする」ことが一般的な治療方針とされています。一方で、長い期間じっと安静にしていると、体を支えるお腹まわりや腰まわりの筋肉(体幹筋)が細くなって弱ってしまう「筋萎縮(きんいしゅく:筋肉がやせてしまうこと)」の心配があります。この研究は、その点を確かめることを目的としています。
調査の方法(対象など)
腰椎分離症と診断された10代のアスリートを対象にした研究です。診断がついてすぐに「理学療法(りがくりょうほう:Physical Therapy、PT。運動療法やストレッチ、姿勢・動きの指導などを行うリハビリ)」を始めるグループと、痛みがなくなってから理学療法を始めるグループに分けて比べた、ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial、治療法をくじ引きのように分けて公平に比べる研究)です。
研究の結果
診断直後から理学療法を始めた「即時PT群」では、「多裂筋(たれつきん:背骨のすぐそばにある、小さくて深い筋肉で、腰を安定させる役割がある)」の機能的筋断面積(FCSA:functional cross-sectional area、機能的筋断面積。筋肉の太さ・量を画像で評価した指標)が約7%増えていました。一方、安静を優先して痛みがなくなってから理学療法を始めたグループでは、同じ多裂筋の機能的筋断面積が約1.4%減っていました。
また、多裂筋がやせてしまう「多裂筋萎縮」が起きた人の割合は、即時PT群では20%だったのに対し、安静優先群では50%と高くなっていました。理学療法の開始が遅くなるほど、多裂筋が小さくなる傾向もみられました。
結論:今回の研究でわかったこと
腰椎分離症の若いアスリートでは、痛みの様子を確認しながら、できる範囲で早めに理学療法を始めることで、多裂筋の萎縮を抑えられる可能性があると考えられます。その結果として、将来の慢性腰痛(まんせいようつう:長く続く腰の痛み)のリスクを減らせる可能性も示されています。
実際の診察ではどう考えるか
腰椎分離症の若いアスリートの診察では、痛みを悪化させないことを前提に、無理のない範囲で早めに理学療法を取り入れていくことが大切だと考えられます。こうした早期の理学療法によって、多裂筋の萎縮をできるだけ防ぎ、将来の慢性腰痛や再発のリスクを減らすことを目指す、という治療戦略が重要になります。
参考文献
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Timing of Physical Therapy and Lumbar Muscle Atrophy in Adolescent Athletes With Spondylolysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42014954/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















