この記事の要点
- 日本語タイトル:VRリハビリは慢性頚部痛に有効な治療か?
- 英語タイトル:Virtual reality based-rehabilitation for chronic neck pain: an overview of systematic reviews with meta-analysis of randomized clinical trials.
このテーマは、リハビリテーション(Rehabilitation:機能回復のための訓練)や整形外科の外来で、実際によく話題になる内容です。
できるだけ専門用語をかみくだいて、日常の診察室でお話しするような形で説明していきます。
研究の背景・目的
慢性頚部痛(まんせいけいぶつう:3か月以上続く首の痛み)は、仕事を休まざるをえなくなることもある、よくみられる症状です。近年は、バーチャルリアリティ(Virtual Reality:仮想現実、専用ゴーグルなどを使って映像の世界に入り込む技術)を使ったリハビリが、「痛みから意識をそらしやすいのではないか」「楽しく続けやすいのではないか」という期待から注目されています。この研究では、慢性の首の痛みに対して、VRリハビリがどの程度役に立つのかを整理して調べることを目的としています。
調査の方法(対象など)
この研究では、CINAHL(シナール:看護・リハビリなどの医学文献データベース)やEmbase(エムベース:医学・薬学の文献データベース)など、複数の大きなデータベースから、慢性頚部痛の成人を対象としたランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT、治療法をくじ引きのように分けて比べる質の高い研究)を含むシステマティックレビュー(Systematic Review:一定のルールで文献を集めてまとめた研究)を集めました。
集めたレビューの質は、AMSTAR2(アムスター2:システマティックレビューの質を評価するチェックリスト)を使って評価し、結果の確からしさはGRADE(グレード:研究結果の信頼度を段階的に評価する方法)という方法で判断しました。
研究の結果
最終的に9本のシステマティックレビューが対象となり、そこに含まれる患者さんは合計で2,000人を超えていました。ただし、同じ研究が複数のレビューに重なって含まれている割合が40〜100%と高く、新しく得られる情報はそれほど多くはありませんでした。
痛みの強さや、日常生活での機能障害(どれくらい生活に支障が出ているか)、患者さん自身が全体的な効果をどう感じたかを示すglobal perceived effect(グローバル・パーシーブド・エフェクト:患者さんの「良くなった」「変わらない」などの総合的な自己評価)については、VRリハビリが他の治療よりはっきり優れているとは言い切れない結果が多くみられました。
また、kinesiophobia(キネシオフォビア:動くと痛くなるのではないかという不安や恐怖)、健康関連QOL(Health-related Quality of Life:健康状態が生活の質にどのように影響しているか)、cervical ROM(サービカル・レンジ・オブ・モーション:首の動く範囲、可動域)についても、VRリハビリと対照群(通常のリハビリなど)との間で、大きな差がないとする結果が多く報告されていました。
結論:今回の研究でわかったこと
今回まとめられた研究からは、VRリハビリは慢性頚部痛に対して、痛みの軽減や機能障害の改善という点では、通常のリハビリと同じくらいの効果にとどまる可能性が高いと考えられます。一方で、短い期間でみたときの満足度や、首の可動域(どこまで動かせるか)の向上については、補助的な価値を持つ可能性が示されています。
実際の診察ではどう考えるか
VRは、慢性頚部痛に対して「劇的に効く特別な治療」というよりは、通常のリハビリに追加して使うことで、「リハビリを続けやすくする」「首の可動域の練習をしやすくする」といった点をねらう位置づけが現時点では妥当と考えられます。実際に導入するかどうかは、機器やプログラムにかかる費用対効果と、患者さんご本人の好みや希望をふまえて、一緒に相談しながら選んでいくことが大切です。
参考文献
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Virtual reality based-rehabilitation for chronic neck pain: an overview of systematic reviews with meta-analysis of randomized clinical trials.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42065789/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















