この記事の要点
- 日本語タイトル:転倒歴高齢者にスマホDT訓練は現実的介入となるか?
- 英語タイトル:Supervised and Self-Directed Technology-Based Dual-Task Exercise Training Program for Older Adults With a History of Falls: Mixed Methods Feasibility Study.
ここでは、転んだことがある高齢の方を対象にしたリハビリのお話を取り上げます。
ふだんのリハビリや整形外科の診察でもよく出てくるテーマですが、専門用語も出てきますので、できるだけかみくだいてお伝えします。
研究の背景・目的
一度転んだことがある高齢の方は、そのあともまた転んでしまう「再転倒」の危険性が高いことが知られています。
転倒を予防する方法のひとつに「デュアルタスク(Dual Task:二重課題)訓練」というものがあります。これは、体を動かす運動と頭を使う認知課題(数を数える・言葉を思い出すなど)を同時に行う訓練です。
このデュアルタスク訓練を、ご自宅で長く続けてもらうことが大切ですが、実際には「続けやすい形にすること」が課題になっていました。
そこで、この研究では、スマートフォン(携帯端末)を使ったデュアルタスク訓練が、転倒歴のある高齢の方にとって、現実的に続けられて、安全に行える方法かどうかを調べることを目的としました。
調査の方法(対象など)
この研究では、過去に転倒したことがある高齢の方45名を対象としました。
参加者には、対面グループで行う訓練と、自宅でスマートフォンのアプリを使って行う訓練を組み合わせた、合計24週間(約6か月間)のデュアルタスク訓練を行ってもらいました。
研究者たちは、このプログラムがどのくらい予定どおり実施できたか(実行可能性)、そして転倒などの問題が起きなかったか(安全性)を評価しました。
研究の結果
24週間のプログラムを最後までやりとおした方の割合(完遂率)は76%でした。
全体として、決められた訓練をどのくらい実際に行えたかを示す「アドヒアランス(adherence:指示された治療や訓練を守って続けられた割合)」は64%でした。
スマートフォンのアプリ自体を使えた割合(アプリ使用率)は95%と高く、訓練中に大きなけがや体調悪化などの「有害事象(adverse events:治療や訓練が原因と考えられる好ましくない出来事)」は0件でした。
また、対面でのサポートがある時期の訓練実施率は81%で、自宅のみで行う時期の50%より高い結果でした。
このことから、対面でのサポートを組み合わせることで、訓練を続けやすくなる可能性があると考えられました。
結論:今回の研究でわかったこと
今回の結果から、転倒歴のある高齢の方に対して、スマートフォンを使ったデュアルタスク訓練を行う方法は、
・プログラムを最後まで続けられた方の割合が比較的高いこと
・アプリの使用率も高かったこと
・訓練による有害事象が報告されなかったこと
などから、一定の安全性があり、現実的に取り入れやすい介入モデルとなる可能性があると考えられました。
実際の診察ではどう考えるか
診察の場で転倒リスクが高い高齢の方をみるときには、
対面でのグループ訓練と、自宅で行うスマートフォンアプリを使ったデュアルタスク訓練を組み合わせる方法を選ぶことで、
安全性に配慮しながら、比較的続けやすいリハビリの計画を立てられる可能性があります。
実際に導入する際には、患者さんそれぞれの体力や認知機能、スマートフォンの扱いに慣れているかどうかなどを確認しながら、無理のない範囲で検討していくことが大切です。
参考文献
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Supervised and Self-Directed Technology-Based Dual-Task Exercise Training Program for Older Adults With a History of Falls: Mixed Methods Feasibility Study.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42150160/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















