この記事の要点
- 日本語タイトル:慢性腰痛に全身筋力トレーニングは本当に有効か?
- 英語タイトル:Effects of whole-body strength training on pain and strength in chronic low back pain. A Randomized controlled trial.
ここで取り上げるのは、リハビリテーション(けがや病気のあとに行う機能回復のための訓練)や整形外科(骨・関節・筋肉・神経などを診る診療科)の外来で、よく話題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけかみくだいて、日常会話に近い形でお伝えしていきます。
研究の背景・目的
慢性腰痛(3か月以上、腰の痛みが続いている状態)の方には、一般的に「体幹運動(たいかんうんどう:お腹や背中まわりの筋肉を鍛える運動)」が勧められています。
この研究では、その体幹運動に加えて「全身筋力トレーニング(全身の筋肉をバランスよく鍛える運動)」を足すことで、どのくらい追加の効果があるのかを調べることを目的としました。
調査の方法(対象など)
慢性腰痛のある方を対象に、「ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:治療法をくじ引きのように無作為に分けて、公平に比べる研究)」という方法で調査しました。
参加者を2つのグループに無作為に分け、1つのグループには「全身筋力トレーニングを体幹を中心としたグループ運動に追加する治療」、もう1つのグループには「グループ運動のみの治療」を行い、それぞれ12週間続けて効果を比べました。
研究の結果
全身筋力トレーニングを追加したグループでは、「腰部圧痛閾値(ようぶあっつういきち:腰を押したときに“痛い”と感じ始める強さの目安)」が高くなりました。これは、同じ強さで押しても以前ほど痛く感じにくくなった、という変化を意味します。
また、このグループでは、患者さん自身が感じる「痛みの強さ」も下がっていました。
一方で、「体幹筋力(お腹や背中の筋肉の力)」については、どちらのグループでも、時間がたつにつれて増えていく傾向がみられました。
結論:今回の研究でわかったこと
今回の研究結果から、慢性腰痛の方では、グループで行う体幹中心の運動に「全身筋力トレーニング」を加えると、「痛覚過敏(つうかくかびん:本来より痛みを感じやすくなっている状態)」がやわらぎ、体幹の筋力も高まりやすくなる可能性が示されました。
ただし、「可能性がある」という段階であり、すべての方に同じ効果が出るとまでは言い切れない点には注意が必要です。
実際の診察ではどう考えるか
慢性腰痛のリハビリテーションを考えるときには、「体幹だけを鍛える」のではなく、「全身の筋力トレーニングも組み合わせる」ことを選択肢のひとつとして考えられます。
そうすることで、「痛覚過敏(痛みを感じやすくなっている状態)」をやわらげつつ、「体幹筋力(お腹や背中の筋力)」も一緒に高めていく、という2つの狙いを同時に目指せる可能性があります。
実際にどのような運動をどの程度行うかは、年齢や体力、ほかの病気の有無などによって変わりますので、担当の医師や理学療法士と相談しながら進めていくことが大切です。
参考文献
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Effects of whole-body strength training on pain and strength in chronic low back pain. A Randomized controlled trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42117614/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















