この記事の要点
- 日本語タイトル:TikTokのACLリハビリ動画は信頼できる情報源か?
- 英語タイトル:Quality assessment of videos on anterior cruciate ligament tear rehabilitation exercises: Is TikTok a good source of medical information for patients?
ここで取り上げる内容は、スポーツでのけがやリハビリ、整形外科の外来でよく話題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、そのつど「英語の正式名称」と「日本語での意味」をできるだけわかりやすく説明しながらお話ししていきます。
研究の背景・目的
「ACL」とは「Anterior Cruciate Ligament(アンスティアリア・クルーシエイト・リガメント)」の略で、日本語では「前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい)」と呼ばれ、膝の中で太ももとすねの骨をつないでいる大事な靱帯です。
ACL断裂(前十字靱帯が切れてしまうけが)は、サッカーやバスケットボールなどのスポーツでよく起こる代表的なスポーツ外傷のひとつとされています。
このけがで手術を受けたあとに行うリハビリテーション(Rehabilitation、機能回復のための訓練)は、再びACLを傷めてしまう「再断裂」をできるだけ防ぐうえで、とても重要と考えられています。
最近は、TikTok(ティックトック)などのSNS(Social Networking Service、ソーシャル・ネットワーキング・サービス/動画や情報を共有するインターネットサービス)で、患者さんがリハビリ方法を調べることが増えています。
そのため、SNS上にあるACL術後リハビリの情報が、どのくらい信頼できる内容なのかを評価する必要があると考えられ、この研究が行われました。
調査の方法(対象など)
研究では、動画共有アプリのTikTokで「ACL rehab exercises(ACLリハビリ運動)」という英語のキーワードを使って検索を行いました。
その中から、英語で説明されているACLリハビリ運動の動画を106本選び出し、分析の対象としました。
さらに、動画を投稿している人が「医療専門職(医師や理学療法士など、医療に関する専門教育を受けた職種)」なのか、「一般ユーザー(医療資格を持たない人)」なのかといった投稿者の属性ごとに分けて、動画の質を比較して評価しました。
研究の結果
動画の評価には、2つの指標が使われました。
1つ目は「mDISCERN(modified DISCERN、修正版DISCERN質問票)」で、これはもともと医療情報の信頼性やわかりやすさをチェックするために作られた「DISCERN(ディサーン)質問票」をもとにした評価方法です。
2つ目は「AEES(ACL Exercise Education Score、ACL運動教育スコア)」で、ACLリハビリ運動について、どれくらい教育的な内容が含まれているかを点数化したものです。
これらの指標で評価したところ、医療専門職が投稿した動画は、一般ユーザーが投稿した動画と比べて、情報の質や教育的な内容の点数が高い傾向がみられました。
一方で、再生回数や「いいね」などの反応の数は、医療専門職の動画のほうが少ない傾向があることも示されました。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究では、TikTokに投稿されているACL断裂のリハビリ動画を全体として見ると、情報の質があまり高くない傾向があると評価されました。
そのため、TikTokでACLリハビリの情報を見るときには、その動画を投稿している人が医療専門職かどうかを確認することが大切だろう、という点が示唆されています。
実際の診察ではどう考えるか
ACL手術後のリハビリについてTikTokで情報を集めている患者さんには、動画を見るときに「投稿者が医師や理学療法士などの医療専門職かどうか」を意識して確認してもらうようお伝えする必要があると考えられます。
また、医療者側にとっては、科学的根拠(エビデンス)にもとづいた内容を、短くてわかりやすい動画として、計画的に発信していくことが求められていると考えられます。
参考文献
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Quality assessment of videos on anterior cruciate ligament tear rehabilitation exercises: Is TikTok a good source of medical information for patients?
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42120063/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















