股関節骨折術後の早期立位・歩行は本当に実践されているか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:股関節骨折術後の早期立位・歩行は本当に実践されているか?
  • 英語タイトル:“Mind the Gap”: Brazilian Physiotherapists Are Not Implementing Early Mobilization Interventions for Postoperative Patients With Hip Fractures.

ここで取り上げる内容は、股関節(太ももの付け根の関節)の骨折の手術後に、どれくらい早く立ったり歩いたりするか、というお話です。
ふだんリハビリテーション(Rehabilitation:けがや病気のあとに、体の機能や生活を取り戻すための訓練)や整形外科(Orthopedics:骨や関節、筋肉などの病気やけがを扱う診療科)でよく問題になるテーマです。
できるだけ専門用語をかみくだいて、日常の診察でお話しするような形で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

股関節骨折の手術を受けたあと、できるだけ早い時期にベッドから起きて立ったり、歩き始めたりすること(早期立位・歩行、Early Mobilization:手術後まもない時期から体を起こして動くこと)は、筋力の低下や寝たきり、合併症の予防につながると考えられています。
一方で、「大事だとわかっていても、実際の現場ではどのくらい行われているのか」「知識と現場での実践に差(ギャップ)があるのではないか」という点が問題になっていました。
この研究では、股関節骨折の手術後の早期立位・歩行が、実際の医療現場でどの程度行われているのか、その実態を明らかにすることを目的としています。

調査の方法(対象など)

この研究では、ブラジルで働いている理学療法士(Physical Therapist:運動や体の使い方を専門にみるリハビリの国家資格を持つ医療職)を対象に、インターネットを使ったアンケート調査を行いました。
アンケートでは、股関節骨折術後の患者さんに対して、早期立位・歩行などの早期動員(Early Mobilization:手術後早い段階から体を動かすこと)について、どのくらい知識があるか、そして実際にどのように実践しているかを詳しくたずね、その結果を解析しました。

研究の結果

調査の結果、次のような特徴がある理学療法士では、股関節骨折術後の早期立位・歩行についての知識や、実際の実践のレベルが高い傾向があることがわかりました。
具体的には、
・整形外科と高齢者医療(Geriatric Medicine:高齢の方の病気や体の状態を専門的に診る分野)の両方を扱うチームで働いていること
・股関節骨折術後の患者さんの担当人数が10人未満であること
・早期動員に関する研修(Training:勉強会や講習会など)を受けた経験があること
・モビリティ評価(Mobility Assessment:立つ・歩くなどの動きやすさを数値や指標で評価すること)を実際に使っていること
これらがそろっているほど、早期立位・歩行に関する知識や実際の取り組みが良好であることが関連していました。

結論:今回の研究でわかったこと

この研究から、股関節骨折の手術後に早い段階で立ったり歩いたりしていくためには、個々の理学療法士の努力だけでなく、病院全体としての支えが大切であることが示されました。
具体的には、整形外科と高齢者医療のチームが連携して診療にあたること、早期動員に関する研修の機会を設けること、モビリティ評価のような評価指標(どのくらい動けているかを客観的にみるもの)を整えることなど、組織としての支援体制が重要であると考えられます。

実際の診察ではどう考えるか

日常の診療で股関節骨折術後の早期動員を進めていくには、「もっと早く歩かせましょう」と現場だけに任せるのではなく、病院や施設の仕組みそのものを見直すことがポイントになります。
たとえば、1人の理学療法士が担当する患者さんの人数をどうするか、早期動員に関する研修をどのように行うか、モビリティ評価などの評価指標を導入するか、そして早期立位・歩行の進め方についてのプロトコル(Protocol:標準的な手順書)を整えるか、といった組織設計を検討することが、早期動員を促すうえで大切になると考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

  • かわな いりなか 八事エリア
  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

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