この記事の要点
- 日本語タイトル:人工股関節・膝関節置換術後の早期リハは本当に有利か?
- 英語タイトル:Early rehabilitation after total hip or knee joint replacement: a narrative review.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーション(Rehabilitation、けがや手術のあとに体の機能を取り戻すための訓練)や整形外科(Orthopedics、骨や関節・筋肉などの病気やけがを扱う診療科)の診察で、よく話題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、そのつど英語名と日本語で説明を加えながら、できるだけ日常会話に近い言葉でお話ししていきます。
研究の背景・目的
変形性股関節症(Osteoarthritis of the Hip、股関節の軟骨がすり減って痛みや動かしにくさが出る病気)や変形性膝関節症(Osteoarthritis of the Knee、膝の軟骨がすり減る病気)が進行して、痛みが強くなったり日常生活に大きな支障が出てきた場合、人工関節置換術(Joint Replacement Surgery、傷んだ関節を人工の関節に入れ替える手術)が選択されることがあります。
股関節の場合は人工股関節全置換術(THA、Total Hip Arthroplasty)、膝の場合は人工膝関節全置換術(TKA、Total Knee Arthroplasty)と呼びます。
こうした手術のあとに、日常生活動作(ADL、Activities of Daily Living、歩く・着替える・トイレに行くなど、ふだんの生活に必要な動き)をどこまで取り戻せるか、また仕事に復帰できるかどうかは、術後のリハビリテーションの進め方が大きく関わるとされています。
この研究では、とくに「どのタイミングからリハビリを始めるのがよいのか」という点に注目しています。
調査の方法(対象など)
この調査は、人工股関節全置換術(THA、Total Hip Arthroplasty、股関節を人工関節に入れ替える手術)または人工膝関節全置換術(TKA、Total Knee Arthroplasty、膝関節を人工関節に入れ替える手術)を受けた患者さんを対象とした研究を集めてまとめた「ナラティブレビュー(Narrative Review、複数の論文を読み、全体の傾向や考え方を整理して解説するタイプの総説)」です。
つまり、ひとつの病院やひとつのグループのデータだけを見るのではなく、すでに発表されている複数の研究結果を読み比べて、「早くからリハビリを始めること」にどのような意味があるのかを整理したものです。
研究の結果
手術後に早い時期からリハビリテーションを始めたグループ(早期リハ群)は、リハビリの開始を遅らせたグループ(遅延群)と比べると、最終的にたどり着く機能のレベルそのものはおおむね同じ程度とされていました。
一方で、早期リハ群では、歩ける距離が伸びるまでのスピードや、関節の可動域(Range of Motion、どこまで曲げ伸ばしできるかの範囲)、筋力の回復が早い傾向が報告されています。
また、深部静脈血栓症(Deep Vein Thrombosis、足の深いところの静脈に血のかたまり〈血栓〉ができる状態)などの合併症(Complication、手術後などに起こりうる別の病気やトラブル)が少なくなる傾向があり、平均的な入院期間も、数日ほど短くなる傾向が示されています。
結論:今回の研究でわかったこと
人工股関節全置換術や人工膝関節全置換術のあとには、入院中の早い段階からリハビリテーションを始めることで、歩行の回復が早まる可能性があり、深部静脈血栓症などの合併症が起こるリスクを減らし、入院期間も短くできることが期待されます。
さらに、退院した直後から外来でリハビリを続けていくことも、回復を支えるうえで役に立つとされています。
実際の診察ではどう考えるか
人工股関節全置換術(THA)や人工膝関節全置換術(TKA)のあとには、患者さんの年齢、もともと持っている病気(併存疾患、Comorbidities)、そして実際に行った手術の方法(術式)などを踏まえて、一人ひとりに合わせた形で「早期リハビリ」を組み立てていくことが大切と考えられます。
入院中に始めたリハビリを、退院後の外来リハビリへと途切れずにつなげていくことで、回復を助け、合併症を予防するうえで有用であるとされています。
参考文献
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Early rehabilitation after total hip or knee joint replacement: a narrative review.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42212771/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















