この記事の要点
- 日本語タイトル:ACL損傷は保存療法だけで安全に競技復帰可能か?
- 英語タイトル:Nonsurgical Anterior Cruciate Ligament Rehabilitation: A Scoping Review of Exercise Descriptors and Return-to-Sport Outcomes.
ここで扱うテーマは、リハビリテーションや整形外科の外来で、スポーツをしている方にとてもよく出てくる話題です。
できるだけ専門用語をかみくだいて、日常会話に近い形でお伝えしていきます。
研究の背景・目的
「ACL」とは「Anterior Cruciate Ligament(前十字靱帯)」という、膝の中にある靱帯のことです。
前十字靱帯は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)をつないでいて、膝が前後やねじれ方向にぐらつかないよう支える大事な組織です。
この前十字靱帯の損傷(ACL損傷)は、サッカーやバスケットボールなど、急な方向転換やストップ動作が多い「ピボットスポーツ」と呼ばれる競技でよく起こります。
治療としては、靱帯を新しく作り直す「再建術(再建手術)」を行う方法と、手術をせずにリハビリテーション(保存療法)で対応する方法があります。
この研究では、手術をしない保存療法を選んだ場合に、どのくらいの人が元の競技に戻れているのか(復帰率)、どのくらいの人が再びケガをしてしまうのか(再受傷率)を整理することが必要だと考えられ、その点を明らかにすることが目的とされています。
調査の方法(対象など)
対象となったのは、14歳以上のアスリートで、前十字靱帯損傷に対して手術を行わず、保存療法を選んだ方たちです。
複数の医学データベースから、条件に合う研究を集め、その中から14本の研究が選ばれました。
それぞれの研究で行われていたリハビリテーションの内容と、その後の経過(競技復帰の状況や再受傷の有無など)について、数字や特徴をまとめる形で整理しています(記述的整理)。
研究の結果
手術をしないで前十字靱帯のリハビリを最後までやりきれた人は全体の53%でした。つまり、およそ半分の方しかリハビリを完遂できていませんでした。
元々やっていた競技に戻れた人は30%で、10人中3人程度という結果でした。
一方で、再びケガをしてしまった人(再受傷)は28%と、およそ3割近くにのぼっていました。
多くの研究では、リハビリの期間が平均で約12週間と比較的短く、またリハビリの内容も研究ごとにばらばらで統一されていませんでした。
このような「短期間のリハビリ」と「内容の不ぞろいさ」が、成績があまり良くなかった一つの要因になっている可能性が示唆されています。
結論:今回の研究でわかったこと
手術をしない保存療法を最後まで続けられた人はおよそ半分で、元の競技レベルに戻れた人は3割程度にとどまっていました。
また、再びケガをしてしまう人の割合は高い結果でした。
このことから、前十字靱帯損傷に対して保存療法を選ぶ場合には、短期間で終わるリハビリではなく、期間と内容をきちんと計画した、長期的なリハビリプログラムが必要だと考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
実際に保存療法を選ぶかどうかを一緒に考えるときには、「短い期間のリハビリだけでは十分な結果が得られにくい可能性がある」という点をお伝えすることが大切だと考えられます。
そのうえで、ある程度の期間をかけて、適切な強度と内容をもった、あらかじめ計画されたリハビリプログラムを前提にして、患者さんと一緒に治療方針を決めていくことが望ましいとされています。
参考文献
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Nonsurgical Anterior Cruciate Ligament Rehabilitation: A Scoping Review of Exercise Descriptors and Return-to-Sport Outcomes.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42233492/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















