この記事の要点
- 日本語タイトル:変形性膝関節症にテーピング追加で効果は上乗せされるか?
- 英語タイトル:Effects of adding Kinesiotaping to conventional physiotherapy on pain, function, and Kinesiophobia in knee osteoarthritis: A randomized controlled trial.
ここで取り上げるのは、整形外科やリハビリテーション科の外来でよくみられる「変形性膝関節症(へんけいせい ひざ かんせつしょう)」という病気についての研究です。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の診察室でお話しするような形で説明していきます。
研究の背景・目的
変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis:ひざの軟骨がすり減って痛みや動かしにくさが出る病気)では、
日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL、立つ・歩く・階段を上るなどふだんの生活で行う動き)の制限や痛みに対して、
温める・電気をかけるなどの物理療法(Physical Therapy:機械や道具を使った治療)と、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法(Exercise Therapy:体を動かす治療)が標準的な治療として行われています。
一方で、筋肉や関節に専用の伸びるテープを貼る「キネシオテーピング(Kinesio Taping:筋肉や関節の動きをサポートすることを目的としたテーピング)」を、これらの標準的なリハビリに追加したときに、
本当にどれくらい意味があるのかは、はっきりわかっていませんでした。
この研究は、「標準的なリハビリにキネシオテーピングを足すことで、痛みや日常生活の動きがどの程度よくなるのか」を確かめることを目的としています。
調査の方法(対象など)
この研究は、単施設ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:1つの医療機関で行われ、患者さんをくじ引きのように2つのグループに分けて比べる研究)という方法で行われました。
片側性変形性膝関節症(One-sided Knee Osteoarthritis:片方のひざだけに変形性膝関節症がある状態)の患者さん44人を対象に、
1つのグループは「通常の理学療法(Conventional Physiotherapy:標準的なリハビリ治療)のみ」を行うグループ、
もう1つのグループは「通常の理学療法にキネシオテーピングを追加する」グループ、
という2つのグループに無作為(ランダム)に割り付けて比較しました。
研究の結果
4週間の治療のあと、どちらのグループでも、
・疼痛VAS(Visual Analog Scale:痛みを0~10などの目盛りで自分で評価する方法)
・WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index:変形性関節症の痛み・こわばり・日常生活動作のしにくさを質問票で評価する指標)
・筋力系機能(Muscle Strength Function:筋力や筋肉を使った動きの能力)
・バランス指標(Balance Measures:ふらつきにくさや姿勢の安定性をみる検査)
が、いずれも統計学的に有意とされるレベルで改善していました。
一方で、ANCOVA解析(Analysis of Covariance:もともとの状態の違いを調整しながら、グループ間の差を詳しく比べる統計手法)で詳しく比べると、
・VAS(痛みの自己評価)
・WOMAC(痛み・こわばり・日常生活動作の質問票)
・30秒椅子立ち上がり(30-Second Chair Stand Test:30秒間に何回イスから立ち上がれるかを見る筋力テスト)
・Functional Reach Test(ファンクショナル・リーチ・テスト:前に手を伸ばせる距離でバランス能力をみる検査)
といった項目の「良くなり方の大きさ」には、2つのグループのあいだで差があるとはいえない結果でした。
また、
・TSK(Tampa Scale for Kinesiophobia:動くことへの恐怖心や不安の強さを評価する質問票)
・FABQ(Fear-Avoidance Beliefs Questionnaire:痛みを避けようとして動かなくなる傾向を評価する質問票)
・階段昇降テスト(Stair Climb Test:階段の上り下りにかかる時間などで機能をみる検査)
については、キネシオテーピングを追加しなかった「通常理学療法のみのグループ」のほうが、より良い成績を示していました。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究では、4週間の通常理学療法(標準的なリハビリ治療)だけでも、痛みや日常生活での動きといった機能は十分に改善していました。
そこにキネシオテーピングを追加しても、痛みや機能の改善が統計学的に明らかに上乗せされているとはいえない、という結果でした。
実際の診察ではどう考えるか
変形性膝関節症の治療では、まずは標準的な理学療法や運動療法(筋力トレーニングやストレッチなど)をしっかり行うことを優先する考え方が妥当と考えられます。
キネシオテーピングは、患者さんご本人の希望や、「テープを貼っていると少し安心できる」といった短期的な安心感などをふまえて、
あくまで補助的なオプション(追加で選べる方法のひとつ)として位置づける、という判断が現実的といえます。
参考文献
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Effects of adding Kinesiotaping to conventional physiotherapy on pain, function, and Kinesiophobia in knee osteoarthritis: A randomized controlled trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42400805/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


