足・歩行・リハビリを大切にするクリニックを目指して
先日、初めてInstagramライブを行いました。
初回ということもあり少し緊張しましたが、これまでお世話になった先生方や医療関係者の皆さん、クリニックに関心を持ってくださっている方々にもご参加いただき、あらためて人とのつながりのありがたさを感じる時間になりました。
今回はライブの中でお話しした内容をもとに、私がなぜ新しい整形外科クリニックを開業しようと考えたのか、そしてどのような診療やリハビリを提供していきたいのかをご紹介します。
歩けなくなる前に、できることがある
私はこれまで、整形外科医として骨折やスポーツ外傷、人工股関節・人工膝関節などの手術治療に携わってきました。
手術によって痛みが改善し、再び歩けるようになる患者さんを数多く診てきました。手術は、適切な時期に行えば非常に大きな効果をもたらす治療です。
一方で、診療を続けるなかで、
「骨折する前に予防できなかっただろうか」
「手術が必要になる前に、もっとできることがあったのではないか」
「痛みのために、患者さんが好きなことを諦めずに済む方法はないだろうか」
と考えることも増えていきました。
歩けなくなることは、単に移動が難しくなるだけではありません。
買い物へ行くこと、仕事を続けること、家族や友人に会うこと、旅行や趣味を楽しむこと。歩く力が低下すると、こうした社会とのつながりまで少しずつ失われてしまうことがあります。
だからこそ、痛みのある場所だけを治療するのではなく、患者さんがこれからも自分らしい生活を続けられるよう支える医療を提供したい。
それが、新しいクリニックを立ち上げようと考えた大きな理由の一つです。
整形外科とリハビリテーションを一体で考える
私の専門は、整形外科とリハビリテーションです。
整形外科では、骨、関節、筋肉、神経などの運動器を診療します。一方、リハビリテーションでは、病気やけがだけではなく、その方が日常生活でどのように動き、何に困っているのかまで考えます。
たとえば、同じ「膝が痛い」という症状でも、原因は患者さんによって異なります。
膝周囲の筋力が不足している方もいれば、股関節の動きが悪い方、扁平足によって膝に負担がかかっている方、歩き方に癖がある方もいます。
痛む場所だけに注射や薬を使っても、身体の使い方や筋力の問題が残っていれば、痛みを繰り返す可能性があります。
そのため新しいクリニックでは、医師の診察と理学療法士によるリハビリを分けて考えるのではなく、一つの治療として連携させることを大切にしたいと考えています。
患者さんの身体を丁寧に評価し、必要な運動、ストレッチ、筋力トレーニング、動作指導を組み合わせる。
単に「その場の痛みを取る」だけではなく、「痛みを繰り返しにくい身体をつくる」ことを目指します。
インソールは、足元から身体を支える治療
ライブでは、インソールについてのご質問もいただきました。
インソールには、大きく分けると次のような種類があります。
・市販されているものを、そのまま靴に入れるタイプ
・市販品を熱などで足に合わせるセミオーダータイプ
・足の形や歩き方を評価して、一から作製するオーダーメイドタイプ
市販のインソールにも、足への負担を軽減できる優れた製品があります。しかし、足の形や症状は一人ひとり異なるため、市販品ですべての方に対応できるわけではありません。
特に、
・外反母趾
・扁平足
・足底腱膜炎
・かかとの痛み
・膝や股関節の痛み
・歩くと足が疲れやすい
・靴が合わず、同じ部分に痛みが出る
といった症状がある場合は、足の形だけでなく、立ち方や歩き方まで確認することが重要です。
足には縦方向と横方向のアーチがあり、これらが身体を支えるクッションの役割を果たしています。アーチが崩れると、足だけではなく、膝、股関節、腰にも負担が広がることがあります。
インソールは、靴の中に入れる単なるクッションではありません。
足のどの部分で体重を受け、どのように地面を蹴るかを調整し、身体全体の動きを支える治療の一つです。
新しいクリニックでは、「あし外来・くつ外来」を設け、足の形、歩き方、靴との相性まで含めて評価し、必要に応じてインソールや靴の選び方をご提案したいと考えています。
運動は、つらいものではなく、続けられるものへ
リハビリ室には、筋力トレーニングやストレッチに使用する機器の導入も検討しています。
筋力をつけるためには、ある程度の負荷をかけるトレーニングが必要です。一方で、身体が硬い方や痛みがある方に、いきなり強い負荷をかけても長続きしません。
そこで大切になるのが、一人ひとりの状態に合わせた運動です。
筋肉を大きくすることだけが目的ではなく、
・関節を動かしやすくする
・普段使えていない筋肉を使えるようにする
・身体をしなやかに動かす
・転倒しにくい身体をつくる
・歩くことを楽にする
といった目的に合わせて、運動を選ぶ必要があります。
将来的には、リハビリ室に来ると自然と身体を動かしたくなり、患者さん同士やスタッフの明るい雰囲気のなかで、前向きにリハビリへ取り組める。
そして、運動を終えた患者さんが「今日も来てよかった」と気持ちよく帰っていける。
そのような場所をつくりたいと思っています。
骨粗鬆症を、骨折してから見つけない
骨粗鬆症の診療も、私が長く取り組んできた分野の一つです。
骨粗鬆症は、骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。しかし、骨折するまでは自覚症状がないことも多く、気づかないまま進行してしまうことがあります。
高齢になってからの骨折、特に背骨や脚の付け根の骨折は、その後の生活に大きな影響を与えます。入院をきっかけに筋力が低下し、外出が減り、介護が必要になる場合もあります。
だからこそ、骨折してから治療を始めるのではなく、骨折する前に骨粗鬆症を見つけ、適切な治療と運動を始めることが重要です。
新しいクリニックでは、骨密度検査や血液検査をもとにした骨粗鬆症診療に加え、転倒予防や筋力維持のためのリハビリにも力を入れていきます。
骨を強くすることと、転ばない身体をつくること。
この両方を行うことで、骨折を防ぎ、いつまでも自分の脚で歩ける生活を支えたいと考えています。
医学的根拠を、分かりやすく診療へ届ける
私は現在、国内外の医学論文を継続的に読み、ホームページでもその内容を紹介しています。
医学は日々進歩しており、以前は一般的だった治療が見直されたり、新しい治療法の有効性が明らかになったりします。
もちろん、論文に書いてある治療をそのまますべての患者さんに当てはめればよいわけではありません。
医学的根拠を確認しながら、患者さんの年齢、生活、希望、身体の状態を考え、目の前の患者さんに最も適した方法を一緒に選ぶことが大切です。
新しい知識を学び続け、それを難しい言葉のまま伝えるのではなく、患者さんにも分かりやすい形にして届ける。
それも、医師として大切にしていきたい姿勢です。
個性を尊重しながら、信頼されるチームへ
ライブでは、採用やスタッフの身だしなみについての質問もいただきました。
私自身は、一人ひとりの個性や多様性を大切にしたいと考えています。
医療は、さまざまな考え方や経験を持つ人が協力することで、より良いものになります。スタッフ全員が同じタイプである必要はありません。
一方で、医療機関では、患者さんから安心して任せてもらえる清潔感や言葉遣い、相手を尊重する姿勢も欠かせません。
個性を尊重することと、好きなように振る舞うことは同じではありません。
それぞれの良さを活かしながら、患者さんや周囲のスタッフに配慮し、協力して働けるチームをつくりたいと思っています。
まだクリニックは開院前ですが、すでに多くの方から応募やお問い合わせをいただいています。
どのような仲間が集まり、どのような組織ができていくのか、私自身もとても楽しみにしています。
100歳まで歩ける社会を目指して
新しいクリニックでは、痛みが出た部分だけを診るのではなく、足、歩行、姿勢、筋力、骨の健康まで含めて、身体全体を診る医療を提供していきたいと考えています。
手術が必要な場合には、適切な医療機関へつなぐ。
一方で、手術になる前にできる治療があるなら、できる限りその可能性を追求する。
患者さんが、
「もう年だから仕方がない」
「痛いから外出を諦めよう」
「家族に迷惑をかけるから、やりたいことを我慢しよう」
と思わずに済むように。
世界標準の整形外科診療とリハビリテーションを地域に届け、一人ひとりがいつまでも社会とつながり、自分らしく活躍できる未来を支える。
そのようなクリニックを目指して、開院準備を進めています。
※本記事は、Instagramライブの内容をもとに、一般の方向けに再構成したものです。症状や治療方法は患者さんによって異なるため、実際の診療については医師へご相談ください。


