この記事の要点
- 日本語タイトル:VRエクサゲームは五十肩の可動域改善に有効か?
- 英語タイトル:Evaluating the Efficacy of Virtual Reality Exergaming in Frozen Shoulder Rehabilitation: A Randomized Clinical Trial.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーションや整形外科の外来でよく問題になるテーマです。
専門的な話も出てきますが、できるだけ日常会話に近い言葉で、ゆっくり説明していきます。
研究の背景・目的
いわゆる「五十肩」は、医学的には「凍結肩(Frozen Shoulder、肩関節の動きが固まってしまう状態)」と呼ばれます。
肩の痛みと、肩が上がらない・回らないといった可動域(動かせる範囲)の制限が出て、服を着替える、髪をとかす、高いところの物を取るなど、日常生活にいろいろな支障が出てきます。
従来のリハビリテーション(関節を動かす運動療法)は、どうしても単調になりやすく、痛みを伴うことも多いため、「つらくて続けにくい」という点が問題になっていました。
この研究では、仮想現実を使った運動ゲーム(Virtual Reality Exergame、VRを使って体を動かすゲーム)を取り入れることで、五十肩の可動域や機能の改善に役立つのか、そして従来のリハビリと比べてどうかを調べることを目的としています。
調査の方法(対象など)
この研究では、原因がはっきりしたケガなどによるものではない「一次性凍結肩(Primary Frozen Shoulder、特別なきっかけがないのに肩が固まってくるタイプの五十肩)」の患者さんを対象としました。
参加した方を、コンピューターを使って無作為(ランダム)に2つのグループに分けました。
1つはVRを使った運動ゲームを行うグループ(VR群)、もう1つは従来のリハビリを行うグループ(従来群)です。
どちらのグループも、6週間にわたってリハビリを行い、その前後で
肩の可動域(どこまで動かせるか)、腕や肩の機能、痛みの程度を比較して評価した臨床試験です。
研究の結果
VR群と従来群のどちらのグループでも、リハビリの前と比べて、いくつかの指標が統計的に意味のあるレベルで改善していました。
具体的には、
PROM(Passive Range of Motion、他動可動域:自分ではなく、他人に動かしてもらったときにどこまで動くか)、
DASH(Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand、上肢機能を評価する質問票:腕・肩・手の使いやすさを点数化したもの)、
VAS(Visual Analog Scale、疼痛尺度:痛みの強さを0〜10などのスケールで自己申告する方法)
の3つが、両方のグループで改善していました。
2つのグループを比べると、PROMのうち「外転(腕を横から上に挙げる動き)」と「屈曲(腕を前から上に挙げる動き)」については、VR群の方がより良く改善していました。
それ以外の指標については、両グループの差ははっきりとは出ていませんでした。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究では、「Beat Saber(ビートセイバー)」という音楽に合わせて腕を振ってブロックを切るタイプのVRゲームを使った運動(VRエクサゲーム)が使われました。
その結果、従来のリハビリと比べて、肩を外側にひねる動き(外旋)の改善は同じくらいでしたが、腕を前に挙げる動き(屈曲)と、横から挙げる動き(外転)の可動域は、VRエクサゲームを行ったグループの方がより改善していました。
一方で、痛みの強さや、腕・肩・手の機能(どれくらい日常生活で使えるか)については、VRと従来リハビリで同じ程度の改善でした。
このことから、Beat Saberを使ったVRエクサゲームは、従来のリハビリと同じくらい痛みや機能の改善が期待でき、そのうえで屈曲・外転の可動域をより伸ばせる可能性があり、続けやすい選択肢となる可能性が示されています。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診療の場面では、Beat Saberの中で出てくるブロックの位置や動きを、肩の治療運動に合わせて工夫して配置することで、リハビリとして使うことが考えられます。
そうすることで、痛みの改善や腕・肩の機能の回復を損なわずに、特に腕を前に挙げる動き(屈曲)と横から挙げる動き(外転)の可動域を伸ばすことをねらったVRリハビリとして、五十肩の患者さんに提案する価値があると考えられます。
参考文献
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Evaluating the Efficacy of Virtual Reality Exergaming in Frozen Shoulder Rehabilitation: A Randomized Clinical Trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42104784/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















