五十肩に関節内ステロイド注射追加はリハビリ単独より有効か?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:五十肩に関節内ステロイド注射追加はリハビリ単独より有効か?
  • 英語タイトル:Intra-articular corticosteroid Injection combined with physical therapy versus physical therapy alone for adhesive capsulitis: a meta-analysis of randomized controlled trials.

ここで取り上げる「五十肩」は、整形外科やリハビリテーション科の外来でよくみられる病気です。
専門的な内容も出てきますが、できるだけ日常の診察でお話しするような、わかりやすい言葉で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

いわゆる五十肩は、医学的には「凍結肩(adhesive capsulitis、肩関節の関節包という袋が固くなって動きにくくなる状態)」と呼ばれます。
時間がたつと自然に少しずつ良くなっていくこともありますが、そのあいだ強い痛みや肩の動きの悪さが続き、日常生活に支障が出やすい病気です。
リハビリテーション(physical therapy、運動療法やストレッチなどで関節の動きを改善していく治療)は大切ですが、効果がはっきり出るまでに時間がかかることが課題とされています。
そこで、肩の関節の中に打つ「関節内ステロイド注射(intra-articular corticosteroid injection、副腎皮質ステロイドという炎症をおさえる薬を関節内に注射する治療)」をリハビリに加えると、どのくらい上乗せの効果があるのかを調べた研究になります。

調査の方法(対象など)

この研究は「メタ解析(meta-analysis、複数の研究結果をまとめて統計的に解析する方法)」という手法で行われました。
具体的には、「ランダム化比較試験(randomized controlled trial、患者さんを無作為に2つ以上のグループに分けて治療法を比べる質の高い研究)」を集めて解析しています。
対象は五十肩(凍結肩)の患者さんで、
1つのグループは「リハビリテーションのみ」を行った人たち、もう1つのグループは「リハビリテーションに関節内ステロイド注射を併用した人たち」です。
効果の評価には、次のような指標が使われました。
・SPADI(Shoulder Pain and Disability Index:肩の痛みと日常生活での使いにくさを点数化した指標)
・VAS疼痛(Visual Analog Scale:痛みを0~10などのスケールで自己申告してもらう方法)
・肩関節ROM(Range of Motion、関節可動域:肩が何度くらいまで曲がるか・上がるか・ひねれるかを角度で測ったもの)
これらを使って、リハビリ単独と、リハビリ+関節内ステロイド注射を比べています。

研究の結果

五十肩の患者さんで、リハビリに関節内ステロイド注射を併用したグループは、リハビリだけのグループと比べて、SPADI(肩の痛みと使いにくさの指標)の改善が平均で約17ポイント大きいという結果でした。
また、肩を前に上げる動き(屈曲)、横に広げる動き(外転)、外側にひねる動き(外旋)の関節可動域(ROM)は、いずれもおおよそ10度前後、注射を併用したグループのほうが多く改善していました。
一方で、VAS疼痛(痛みの強さの自己評価)と、腕を内側にひねる動き(内旋)の可動域については、2つのグループのあいだに統計学的に明らかな差(有意差)はみられなかったと報告されています。

結論:今回の研究でわかったこと

この研究からは、五十肩の患者さんに対して、リハビリに関節内ステロイド注射を追加すると、短い期間のあいだでみたときに、肩の機能(使いやすさ)と動かせる範囲(可動域)がより改善していた、という結果が示されています。
そのため、五十肩の治療の初期段階で、「できるだけ早く、ある程度動かせる肩にしていく」ことを目標とする場合に、関節内ステロイド注射をリハビリと組み合わせる方法は、有用な選択肢のひとつと考えられています。

実際の診察ではどう考えるか

五十肩の治療では、「痛みを完全になくすこと」だけでなく、「早めに肩の動く範囲を広げて、日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living、着替え・洗顔・家事などふだんの生活動作)をしやすくすること」も大切な目標になります。
そのため、病気の初期の段階で、リハビリに加えて関節内ステロイド注射を行うことを、ひとつの治療の選択肢として考えることがあります。
ただし、この研究で示されているのは主に「短期的な成績」であることと、ステロイド注射には感染や血糖値上昇などの副作用のリスクがあることも知られています。
そのため、実際の診察では、患者さんそれぞれの症状の程度や持っている病気、生活スタイルなどをふまえ、注射を行うかどうかを慎重に判断していくことが重要になります。


参考文献

  • Intra-articular corticosteroid Injection combined with physical therapy versus physical therapy alone for adhesive capsulitis: a meta-analysis of randomized controlled trials.

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42340454/


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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