この記事の要点
- 日本語タイトル:ACL再建後リハに電気刺激追加で痛みと可動域は改善するか?
- 英語タイトル:Effects of electrical stimulation on lower limb function after anterior cruciate ligament reconstruction: a systematic review and network meta-analysis.
ここで取り上げるのは、前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい:Anterior Cruciate Ligament、ACL)という膝の中の靱帯を再建する手術のあと、リハビリテーション中によく問題になる「痛み」と「膝の曲げ伸ばしのしづらさ」についての話です。
ふだん外来でお話ししているように、専門用語はできるだけかみくだいて説明していきます。
研究の背景・目的
ACL(前十字靱帯)を再建する手術のあと、多くの方で「膝の痛み」と「膝がしっかり曲がらない・伸びない」といった可動域(かどういき:関節が動く範囲)の制限が、リハビリを進めるうえで大きなさまたげになります。
そこで、電気刺激療法(でんきしげきりょうほう:電気を使って筋肉や神経に刺激を与える治療)が役に立つのではないかと考えられてきましたが、どのくらい効果があるのか、またどの種類の電気刺激がよいのかについては、これまで十分には調べられていませんでした。
この研究は、ACL再建後のリハビリに電気刺激を加えることで、痛みや膝の動きがどの程度よくなるのかを整理して調べることを目的としています。
調査の方法(対象など)
この研究は、「ランダム化比較試験(らんだむかひかくしけん:治療法をくじ引きのように分けて公平に比べる研究)」だけを集めてまとめた、系統的レビュー(けいとうてきれびゅー:関連する研究を網羅的に集めて評価する方法)と、ネットワークメタ解析(ねっとわーくめたかいせき:複数の治療法をまとめて比較する統計手法)です。
ACL再建手術を受けた患者さんを対象に、「リハビリだけ行ったグループ」と、「リハビリに加えていろいろな種類の電気刺激を行ったグループ」とを比べました。
そのうえで、
・痛みの強さ
・膝の可動域(曲げ伸ばしのしやすさ)
・IKDCスコア(あいけーでぃーしーすこあ:International Knee Documentation Committee score。膝の痛み・安定性・日常生活での使いやすさなどを総合的に点数化した評価)
といった項目を評価しました。
研究の結果
リハビリに電気刺激を組み合わせたグループは、リハビリだけのグループと比べて、痛みと膝の可動域(ROM:Range of Motion、れんじ・おぶ・もーしょん。関節が動く角度の範囲)が「中くらいの程度」でよくなっていました。
ネットワークメタ解析の結果では、
NMES(Neuromuscular Electrical Stimulation、にゅーろますきゅらー・えれくとりかる・すちむれーしょん:神経筋電気刺激。筋肉を動かす神経や筋肉そのものに電気を流して、筋肉の収縮を助ける方法)が、
・VAS(Visual Analog Scale、びじゅある・あなろぐ・すけーる:痛みを0〜10などの目盛りで自己申告してもらう評価)でみた痛み
・膝の可動域(ROM)
の両方で、いちばん効果が大きいという結果でした。
また、TENS(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation、とらんすきゅーていにあす・えれくとりかる・なーぶ・すちむれーしょん:経皮的電気神経刺激。皮膚の上から神経に弱い電気を流して痛みを和らげる方法)と比べると、NMESのほうが膝の可動域の改善において優れているとされました。
一方で、IKDCスコアのような、膝の総合的な機能の点数については、改善がみられても限られた範囲にとどまっていました。
結論:今回の研究でわかったこと
ACL再建後のリハビリに電気刺激療法を追加すると、痛みと膝の可動域が統計的にみて有意に(ゆういに:偶然とは言い切れない程度にはっきりと)よくなる可能性が高いと考えられました。
その中でも、神経筋電気刺激(NMES)は特に有望とされており、手術後の早い時期に、膝の可動域を確保したり、痛みをやわらげたりするための補助的な手段として役立つ可能性が示されています。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診療では、ACL再建後の標準的なリハビリに、神経筋電気刺激(NMES)を早い段階から組み合わせることで、痛みをやわらげつつ、膝の可動域(ROM)を効率よく確保できる可能性があります。
ただし、IKDCスコアのような「膝全体の機能」を表す評価は、電気刺激だけでは十分に改善しきれない部分もあるため、筋力トレーニングやバランス訓練、スポーツ復帰に向けた動きの練習など、別のリハビリをあわせて行う必要があると考えられます。
参考文献
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Effects of electrical stimulation on lower limb function after anterior cruciate ligament reconstruction: a systematic review and network meta-analysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42351029/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















