この記事の要点
- 日本語タイトル:脊髄損傷リハビリでキネシオテーピングは有効か?
- 英語タイトル:Kinesio Taping in spinal cord injury rehabilitation: A scoping review.
このテーマは、リハビリテーションや整形外科の外来で、実際によく相談を受ける内容です。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の診察室でお話しするような形で説明していきます。
研究の背景・目的
この研究では、脊髄損傷(Spinal Cord Injury、背骨の中を通る神経である脊髄が傷つく病気やけが)のリハビリテーションの中で、キネシオテーピング(Kinesio Taping、伸縮性のあるテープを皮膚に貼って筋肉や関節の動きをサポートしたり、痛みやこわばりを和らげることをねらう方法)が役に立つかどうかを整理しています。具体的には、筋肉のつっぱり(痙縮)、姿勢を保つ力(姿勢制御)、手や指の細かい動き(手指機能)、そして床ずれ(褥瘡)に関係する状態に対して、キネシオテーピングがどの程度有用かを、これまでの研究を集めて全体像を確認する「スコーピングレビュー(Scoping Review、関連する研究を広く集めて、どんな結果が出ているかを整理する調査方法)」という形で検討しています。
調査の方法(対象など)
脊髄損傷(Spinal Cord Injury、脊髄が損傷して手足のまひや感覚の障害などが出る状態)の患者さんを対象にした研究の中から、通常行われているリハビリテーションに加えて、キネシオテーピング(Kinesio Taping、伸び縮みするテープを貼る治療法)を上乗せして行った「介入研究(Intervention Study、実際に治療や方法を追加して、その前後で変化を比べる研究)」を探しました。
そのために、医学論文が登録されている複数のデータベース(医学情報を集めた大きな検索システム)を使い、決められた条件にそって系統的に検索し、条件に合う研究だけを抽出して検討しています。
研究の結果
条件に合って抽出された研究は4本で、どれも参加している患者さんの人数が多くない小規模な研究でした。これらの研究では、筋肉のつっぱり(痙縮)、姿勢を保つ力(姿勢制御)、手や指の動き(手指機能)、床ずれ(褥瘡)に関係する指標について、短い期間の中では改善がみられたと報告されています。ただし、どの研究も参加した患者さんの数が限られていて、観察した期間も長くはないため、これらの結果をそのまま多くの脊髄損傷の患者さん全体に当てはめてよいかどうかについては、慎重に受け止める必要があるとされています。
結論:今回の研究でわかったこと
今回まとめられた研究からは、脊髄損傷の患者さんに対してキネシオテーピング(Kinesio Taping、伸縮性テープを用いた補助的な治療)が、筋肉のつっぱり(痙縮)や姿勢の安定(姿勢制御)などを、短い期間の中である程度改善させる可能性が示されています。一方で、研究の数自体がまだ少なく、1つ1つの研究での患者さんの人数も多くないため、現時点ではキネシオテーピングを「主な治療」として使う段階ではなく、あくまで通常のリハビリに加える「補助的な方法」として位置づけるのが妥当と考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
日常の診療では、まずは標準的なリハビリテーションや、筋肉のつっぱり(痙縮)や床ずれ(褥瘡)に対する基本的な治療・ケアを優先して行うことが大切です。そのうえで、キネシオテーピング(Kinesio Taping、伸縮性テープを使った補助療法)については、短期間の補助的な効果が期待できる可能性がある一方で、効果の確かさにはまだ不明な点が多いことを、患者さんやご家族にあらかじめ説明します。その上で、ご希望や状態を踏まえながら、通常のリハビリに追加して試してみる、という立場が現時点では妥当と考えられます。
参考文献
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Kinesio Taping in spinal cord injury rehabilitation: A scoping review.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41677377/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

















