この記事の要点
- 日本語タイトル:ケーゲル体操の理解と実践は理学療法学生と看護学生で差があるか?
- 英語タイトル:Comparative Analysis of Kegel Exercise Knowledge, Application, and Recommendation Between Physical Therapy and Rehabilitation and Nursing Students.
ここで取り上げるテーマは、リハビリテーション(けがや病気のあとに体の機能を回復させる医療)や整形外科(骨や関節、筋肉などを診る診療科)の外来で、日常的によく関わる内容です。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけかみくだいて、普段の診察室でお話しするような言葉で説明していきます。
研究の背景・目的
「骨盤底筋(こつばんていきん)」とは、骨盤のいちばん下でハンモックのように内臓を支えている筋肉の集まりです。この筋肉を鍛える「骨盤底筋トレーニング」は、尿がもれやすくなる「尿失禁(にょうしっきん)」の予防や治療に役立つとされている方法です。
このトレーニングは、体にメスを入れたり器具を入れたりしない「非侵襲(ひしんしゅう:体を傷つけない)」な方法で、特別な機械もあまり必要としないため「低コスト(費用が比較的少なくてすむ)」な治療として知られています。
その中でも「ケーゲル体操(Kegel exercise:骨盤底筋を意識して締めたりゆるめたりする体操)」は代表的な方法ですが、将来リハビリを担当する「理学療法学生(理学療法士になるために学んでいる学生)」と、看護師を目指す「看護学生」のあいだで、このケーゲル体操についての理解度や、自分で実際にやっているかどうか、患者さんに勧めているかどうかに差があるかどうかは、これまで十分には調べられていませんでした。
そこで、この研究では、理学療法学生と看護学生のあいだで、ケーゲル体操に関する知識や実践の状況に違いがあるかどうかを明らかにすることを目的としました。
調査の方法(対象など)
この研究はトルコの大学で行われました。対象となったのは、理学療法・リハビリテーション学科に在籍している学生150名と、看護学科に在籍している学生100名です。
研究のデザインは「横断研究(おうだんけんきゅう:ある一時点で多くの人にアンケートなどを行い、その時点での状態を比べる研究方法)」という形で行われました。
調査には「構造化質問票(こうぞうかしつもんひょう:あらかじめ決められた質問を同じ形式で全員に行うアンケート)」が使われ、
・ケーゲル体操についてどのくらい知っているか(知識)
・自分自身がどのくらいの頻度で行っているか(実践頻度)
・家族や友人、患者さんなど他の人に勧めているかどうか(他者への推奨)
・実際に効果を感じているかどうか(効果実感)
といった点が評価されました。
研究の結果
調査の結果、理学療法学生は看護学生と比べて、次のすべての項目で統計学的に意味のある差(有意差)があるとされるほど高いスコアを示しました。
・ケーゲル体操に関する知識
・自分でケーゲル体操を行っている頻度
・他の人にケーゲル体操を勧めているかどうか
・ケーゲル体操の効果をどの程度実感しているか
研究の中では、この違いは、理学療法学科と看護学科で学んでいる内容(カリキュラム)の違いが影響している可能性があると考えられました。
そのうえで、看護教育の中にも骨盤底筋トレーニングをきちんと取り入れていくことが提案されています。
結論:今回の研究でわかったこと
今回の研究から、理学療法学生は看護学生と比べて、ケーゲル体操についての知識がより多く、自分で実践している割合も高く、周囲の人に勧めることも多い傾向があると示されました。これらの違いは統計的にも意味がある(有意)とされています。
この結果から、骨盤底筋トレーニングについての教育内容をさらに充実させることが、将来、患者さんに行う指導の質を高めるうえで大切だと考えられています。
実際の診察ではどう考えるか
尿失禁の診療では、いきなり薬を使ったり手術を行ったりする前に、まずは「保存療法(ほぞんりょうほう:体への負担が比較的少ない治療)」として、ケーゲル体操を含む骨盤底筋トレーニングを位置づけることが一般的です。
そのためには、医師だけでなく、看護師をはじめとしたさまざまな職種の医療スタッフが、骨盤底筋トレーニングについて学び、患者さんにわかりやすく指導できる体制を整えていくことが必要だと考えられます。
参考文献
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Comparative Analysis of Kegel Exercise Knowledge, Application, and Recommendation Between Physical Therapy and Rehabilitation and Nursing Students.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41870567/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















