この記事の要点
- 日本語タイトル:腰痛による就労障害を短時間で評価できる質問票は?
- 英語タイトル:Development and psychometric evaluation of a Rasch-based brief form of the work rehabilitation questionnaire for low back pain.
ここでは、腰痛がある方の「仕事への影響」を、短い質問票でどう評価するかを扱った研究を紹介します。
リハビリテーション科や整形外科の外来で、日常的によく問題になるテーマです。
専門的な内容も出てきますが、できるだけ日常の言葉でお話ししていきます。
研究の背景・目的
腰痛(英語名:Low Back Pain、略して LBP)は、世界的に見ても「仕事が続けにくくなる」「働けなくなる」といった就労障害の大きな原因のひとつとされています。
腰痛による就労障害は、痛みだけでなく、体の動き、気持ちの状態、考え方、疲れや睡眠など、いろいろな面が関わるため、多方面から評価することが大切とされています。
もともと、Work Rehabilitation Questionnaire(ワーク・リハビリテーション・クエスチョネア、略称 WORQ)という、仕事に関する困りごとを幅広く評価する質問票がありますが、質問数が多く、外来診療や職場の健康管理の場では、患者さん・医療者ともに負担が大きいとされています。
そこで、この研究では、腰痛に特化した、より短くて、なおかつ信頼して使える短縮版の質問票「WORQ-LBP(腰痛用 WORQ の短縮版)」を作ることを目的としました。
調査の方法(対象など)
対象となったのは、腰痛のある425人の方で、年齢は18〜65歳、現在働いている方か、仕事を探している方(求職中の成人)が含まれています。
これらの方に、腰痛用の WORQ に加えて、いくつかの評価を行いました。
ひとつは Oswestry Disability Index(オズウェストリー・ディスアビリティ・インデックス、略称 ODI)という質問票で、腰痛によって日常生活の動作がどのくらい不自由になっているかを調べる「腰痛機能障害尺度」です。
もうひとつは数値評価スケール(英語名:Numerical Rating Scale、略称 NRS)で、痛みの強さを0〜10などの数字で表してもらう、よく使われる痛みの評価方法です。
さらに、Work Ability Index(ワーク・アビリティ・インデックス)の単一項目版という、「自分の仕事をこなす力(仕事能力)」を1問でたずねる質問も行いました。
これらの結果をもとに、Rasch(ラッシュ)分析という統計学的な方法を使って、質問項目をしぼり込み、質問票としての性質(どの程度正確に測れているかなど)を評価しました。
研究の結果
検討の結果、最終的に15問からなる短縮版 WORQ-LBP が作成されました。
内訳は、「ものの考え方や理解などの認知」に関する項目が6問、「体の動きや力などの身体」に関する項目が4問、「気分や不安などの心理」に関する項目が3問、「疲労」に関する項目が1問、「睡眠」に関する項目が1問です。
それぞれのグループ(サブスケール)の信頼性は、Cronbach α(クロンバック・アルファ)という指標で0.79以上とされており、この値は、同じグループ内の質問が、同じような性質のことを安定して測れていると判断される範囲とされています。
また、Raschモデル(ラッシュモデル)という統計モデルへの当てはまりも、おおむね良好とされました。
この質問票は、特に「中等度の就労障害」があるレベルの人を評価するときに、測定の精度が高いとされています。
さらに、得られたスコアは「間隔尺度」として解釈できるとされており、これは、スコアの差(たとえば10点と15点の差)が、どの部分でも同じ意味を持つように扱える、という統計学的な性質を指します。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究では、腰痛のある方の「仕事への影響(就労障害)」を評価するための、15問からなる短縮版 WORQ-LBP が開発されました。
この質問票を使うことで、心理面(気分や不安など)、身体面(体の動きや力など)、認知面(考え方や理解など)を、比較的信頼して評価できるとされています。
特に、中等度の障害がある方の状態を把握するのに向いており、外来診療などの日常診療の場で、まずは「スクリーニング(大まかなふるい分け)」をする目的で使うのに役立つと考えられています。
一方で、この質問票を使って、治療前後の変化をどの程度細かくとらえられるか(変化検出)や、将来の経過をどのくらい予測できるか(予後予測)については、今後さらに検証が必要とされています。
実際の診察ではどう考えるか
15項目版 WORQ-LBP は、腰痛のある方について、「仕事にどのくらい影響が出ているか」を、身体・心理・認知・疲労・睡眠といった複数の面から、比較的短い時間で把握するための道具(ツール)です。
特に、中等度の就労障害がある患者さんで、より役立つとされています。
外来での初診時や、その後のフォローの場面で、この質問票を使うことで、「どの部分が特に仕事の妨げになっているのか(ボトルネックになっている領域)」を見える形にし、どこから優先的に治療や支援を行うかを考える材料として活用することが想定されています。
参考文献
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Development and psychometric evaluation of a Rasch-based brief form of the work rehabilitation questionnaire for low back pain.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41903341/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















