この記事の要点
- 日本語タイトル:膝リハビリ運動と日常生活動作はどちらが膝に高負荷か?
- 英語タイトル:Comparing kinematic and kinetic demands on the knee joint during selected physiotherapy exercises and activities of daily living.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーションや整形外科の外来でよく話題になるテーマです。
専門的な医学の話も出てきますが、「キネマティクス(Kinematics、関節の動き方の分析)」や「キネティクス(Kinetics、関節にかかる力の分析)」といった言葉も、できるだけかみくだいてお話ししていきます。
研究の背景・目的
膝関節は、スポーツでのけが(スポーツ外傷)、変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis、膝の軟骨がすり減っていく病気)、人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty、傷んだ膝関節を人工関節に置き換える手術)のあとなど、さまざまな障害や手術が起こりやすい関節です。
リハビリでよく行うスクワットやランジといった運動が、日常生活での歩行や階段の上り下りと比べて、膝にどのくらいの負担(関節にかかる力や筋肉の働き)をかけているのかを、数値としてきちんと比べた研究は多くありませんでした。そこで、この研究ではそれらの負荷を具体的な数字で比べることを目的としました。
調査の方法(対象など)
特に膝に問題のない健常な成人30名を対象にしました。
スクワットやランジ、片脚立ちといったリハビリ運動に加えて、歩行や階段の上り下り、椅子からの立ち座りなど、ADL(Activities of Daily Living、日常生活動作:ふだんの生活で行う基本的な動き)を含む合計20種類の動作を調べました。
評価には3Dモーション解析(3D Motion Analysis、体の動きや関節の角度、力のかかり方を立体的に計測する方法)を用いて、膝の曲がり具合(膝屈曲角度)、膝関節にかかる力(関節反力)、筋肉の活動量(筋活動)を測定しました。
研究の結果
ランジ、スクワット、階段の上り下り、歩行では、膝の曲がる角度(膝屈曲角度)、膝にかかる力(関節反力)、筋肉の活動量(筋活動)がいずれも高く、「膝への負荷が高いグループ」に分類されました。
椅子からの立ち座りは、それらと比べて中くらいの負荷でした。
片脚立ちや、体重を左右に移すバランスシフト(Balance Shift、立ったまま重心を移動させる動き)は、膝関節にかかる力と筋肉の活動量が低く、「膝への負荷が低いグループ」に入る結果でした。
結論:今回の研究でわかったこと
歩行や階段の上り下りは、多くのリハビリ運動と同じくらい、あるいはそれ以上に膝への負担がかかるという結果でした。
そのため、人工膝関節置換術などの手術直後の早い時期には、スクワットのような運動だけでなく、歩行や階段昇降の負荷をどのように管理するかを、より優先して考える必要があるとされています。
実際の診察ではどう考えるか
歩行や階段の上り下りは、一見ふつうの生活動作ですが、患者さんにとっては「高負荷のトレーニング」に近い働きをする場合があります。
手術直後の早い時期や、痛み(疼痛)が強い方では、スクワットなどの運動を増やす前に、まずは歩く距離や階段をどの程度使うかを決めて、段階的に制限をゆるめていく計画を立てる必要があると考えられます。
参考文献
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Comparing kinematic and kinetic demands on the knee joint during selected physiotherapy exercises and activities of daily living.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41914802/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















