この記事の要点
- 日本語タイトル:入院リハでデジタル機器を用いた歩行練習は定着するか?
- 英語タイトル:Evaluation of a multi-faceted strategy for implementation of mobility exercises using digital devices within an inpatient rehabilitation setting: phase I of a feasibility hybrid type II implementation-effectiveness randomised controlled trial.
ここで取り上げる内容は、入院中のリハビリテーション(rehabilitation:けがや病気のあとに、体の機能を取り戻すための訓練)や、整形外科(orthopedics:骨・関節・筋肉など運動器の病気を扱う診療科)の現場で、よく問題になるテーマです。
専門的な話も出てきますが、できるだけ日常の外来でお話しするような、わかりやすい言葉で説明していきます。
研究の背景・目的
入院中のリハビリテーションで、タブレット端末などのデジタル機器を使って行う「モビリティ練習(mobility exercise:歩く、立つ、移動するなどの動きの練習)」は、患者さんの回復に役立つ可能性があると考えられています。
一方で、病院にデジタル機器を入れるだけでは、現場のスタッフのあいだで十分に使われず、日常のリハビリに「根づかない」という問題がありました。
この研究では、「どうすれば、デジタル機器を使った練習が、入院リハビリの現場にきちんと定着するのか」を確かめることを目的としました。
調査の方法(対象など)
この研究では、公立病院のリハビリテーション病棟で働く理学療法士(physical therapist:PT、主に運動のリハビリを担当するリハビリ専門職)を対象にしました。
研究チームは、「多面的実装戦略(multi-faceted implementation strategy:いくつかの方法を組み合わせて、新しい取り組みを現場に広めていく工夫)」を行い、その実行状況を詳しく調べました。
具体的には、
・実施忠実度(fidelity:あらかじめ決めた計画どおりに実施できているかどうか)
・実施量(dose:どれくらいの時間や回数をかけて実施されたか)
という2つの点を評価しました。
研究の結果
行った多面的実装戦略は、計画どおりに実施されており、「実施忠実度(fidelity)」は高いと評価されました。
当初の想定よりも、トレーニングに必要な時間(実施量:dose)は多くかかりましたが、最終的には、すべての理学療法士(PT)が、担当する患者さんのモビリティ訓練でデジタル機器を使うようになりました。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究から、「多面的実装戦略(いくつかの支援策を組み合わせる方法)」をとることで、入院中のリハビリテーションにおいて、デジタル機器を使ったモビリティ訓練が、理学療法士(PT)全員に広がっていく可能性があることが示されました。
つまり、工夫した導入のしかたをすれば、デジタル機器を使ったリハビリが、病棟全体に浸透していく可能性があると考えられました。
実際の診察ではどう考えるか
デジタル機器をリハビリに取り入れるときには、「どんな機器を使うか」だけでなく、「誰がどう支え、どんな仕組みで運用するか」が重要だと考えられます。
ここでいう臨床チャンピオン(clinical champion:現場の中心となって、新しい取り組みを引っ張っていく医療スタッフ)や、多面的支援体制(multi-faceted support system:教育、サポート、仕組みづくりなどを組み合わせた支援の体制)を整えることが、デジタル機器を現場に根づかせるうえで大切になるとされています。
参考文献
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Evaluation of a multi-faceted strategy for implementation of mobility exercises using digital devices within an inpatient rehabilitation setting: phase I of a feasibility hybrid type II implementation-effectiveness randomised controlled trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41935018/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















