産後骨盤帯痛にキネシオテーピングは有効か?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:産後骨盤帯痛にキネシオテーピングは有効か?
  • 英語タイトル:Kinesio taping effectively improved pain and disability in postpartum women with pregnancy-related pelvic girdle pain: a randomized controlled trial.

ここで取り上げる内容は、リハビリテーション科や整形外科の外来で、産後の方によくみられる症状についての話です。
専門的な内容も出てきますが、できるだけ日常のことばで、ゆっくり説明していきます。

目次

研究の背景・目的

妊娠関連骨盤帯痛(Pregnancy-related Pelvic Girdle Pain:プレグナンシー・リレイテッド・ペルビック・ガードル・ペイン、妊娠や出産に関連して起こる骨盤まわりの痛み)は、産後の女性に比較的よくみられる症状です。一般的には、筋力トレーニングなどの運動療法(Exercise Therapy:エクササイズ・セラピー、体を動かして行う治療)がすすめられますが、産後まもない時期は、強い負荷の運動を行うのが難しい方も少なくありません。そこで、皮膚に伸縮性のあるテープを貼る治療法であるキネシオテーピング(Kinesio Taping:キネシオテーピング、筋肉や関節をサポートする目的で貼るテープ療法)が、体に負担の少ない方法としてどの程度役に立つのかが、この研究で検証されました。

調査の方法(対象など)

妊娠関連骨盤帯痛と診断された産後の女性33名を対象にしました。
この方たちを、無作為割付(Randomization:ランダマイゼーション、くじ引きのように偶然でグループ分けする方法)で2つのグループに分けました。1つは、後方オブリークスリング(Posterior Oblique Sling:ポステリア・オブリーク・スリング、背中から骨盤・股関節まわりの筋肉や筋膜が斜めにつながる支持のライン)と仙腸関節(Sacroiliac Joint:サクロイリアック・ジョイント、骨盤の中央にある仙骨と、左右の腸骨のつなぎ目の関節)をねらってキネシオテーピングを行うグループ16名、もう1つは、見た目は似ているが治療効果が出にくい貼り方をするシャムテーピング(Sham Taping:シャム・テーピング、偽のテーピング)を行うコントロール群17名でした。
どちらのグループも、2週間のあいだに合計4回テーピングを行い、その前後で痛みの強さや、日常生活でどのくらい困っているか(障害度)などを比較して調べました。

研究の結果

キネシオテーピングを行ったグループでは、コントロール群と比べて、痛みの強さがより大きく減っていました。また、日常生活でどのくらい困っているかを数値化した障害度スコアも、キネシオテーピング群のほうがより良くなっていました。
さらに、Timed Up-and-Go(タイムド・アップ・アンド・ゴー、椅子から立ち上がって少し歩き、また座るまでの時間を測るテスト)という動作のテストや、身体的QOL(Quality of Life:クオリティ・オブ・ライフ、体の調子が生活の質にどのくらい影響しているかをみる指標)も、キネシオテーピング群のほうが良好でした。
一方で、骨盤底筋機能(Pelvic Floor Muscle Function:ペルビック・フロア・マッスル・ファンクション、尿もれ予防や内臓を支える骨盤の底の筋肉の働き)については、2つのグループのあいだで明らかな差はみられませんでした。これらの結果から、キネシオテーピングは、少なくとも短い期間では、症状や動きの面での改善につながる可能性が示されました。

結論:今回の研究でわかったこと

産後の妊娠関連骨盤帯痛に対して、骨盤のまわりに2週間キネシオテーピングを行うと、偽のテーピングをした場合と比べて、痛みや日常生活での困りごとが統計的に有意に(Statistically Significant:スタティスティカリー・シグニフィカント、偶然だけでは説明しにくい程度にはっきりと)改善していました。
そのため、体への負担が少ない治療法の1つの候補として、キネシオテーピングが役立つ可能性があると考えられます。

実際の診察ではどう考えるか

産後まもない時期で、強い筋トレや激しい運動が難しい妊娠関連骨盤帯痛の方には、キネシオテーピングを、痛みをやわらげたり、動きやすくしたりするための補助として使う方法が考えられます。
まずテーピングで動きやすさを少し整え、そのうえで、無理のない範囲から運動療法へつなげていく「橋渡し」として活用する、という戦略が有用と考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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