DPT課程で2年目以降に解剖復習ラボを組み込むと知識は向上するか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:DPT課程で2年目以降に解剖復習ラボを組み込むと知識は向上するか?
  • 英語タイトル:Retrieval Practice Through an Integrated Anatomy Laboratory Experience in a Doctor of Physical Therapy Curriculum.

ここで取り上げているのは、リハビリテーションや整形外科の診療で関わる「理学療法士の教育」の話です。
専門的な内容ですが、できるだけ日常の外来でお話しするような言葉で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

DPT(Doctor of Physical Therapy、理学療法博士課程)は、理学療法士になるための大学院レベルの専門教育課程です。1年目には、肉眼解剖(Gross Anatomy、肉眼で体の構造を学ぶ解剖学)が基礎としてしっかり行われますが、そのあと学年が進んでからは、解剖の内容を継続的・体系的に復習する機会があまりありませんでした。特に2年目以降の筋骨格系(Musculoskeletal System、骨や筋肉、関節などの仕組み)を学ぶ科目では、解剖の復習や、時間をあけて繰り返し学ぶ「間隔学習(Spaced Learning、一定の間隔をあけて復習する学習法)」、自分の頭から思い出す練習である「想起練習(Retrieval Practice、覚えたことを自力で思い出すトレーニング)」が、計画的には組み込まれていませんでした。
そこで、この研究では、2年目以降の授業の中に解剖の復習ラボを組み込むことで、学生の知識がどのくらい高まるのかを調べることを目的としました。

調査の方法(対象など)

対象となったのは、2年目のDPT学生62名です。筋骨格系のPatient Management Course(PMC、患者管理コース:筋肉や骨の問題を持つ患者さんの評価や治療を学ぶ授業)の中に、2回のIntegrated Anatomy Experiences(IAEs、統合解剖体験)というセッションを組み込みました。
このセッションでは、骨学レビュー(Osteology Review、骨の形や位置を復習する学習)、プロセクト標本観察(Prosected Specimens、あらかじめ解剖され準備された人体標本を観察すること)、触診ガイド(Palpation Guide、体の表面から骨や筋肉を手で触って確かめる練習の手順)、症例統合(Case Integration、実際の症例を想定して解剖の知識と結びつけて考える練習)を行いました。
そのうえで、セッションの前後に同じ内容のテスト(事前テストと事後テスト)を行い、さらに学生からの感想など質的評価(Qualitative Evaluation、数値だけでなく言葉での評価)も集めて、効果を検証しました。

研究の結果

10問のテスト問題のうち9問で、事後テストの正答率が上がりました。多くの項目で統計的に意味のある改善がみられ、効果量r(Effect Size r、どの程度の変化があったかを示す指標)は0.31〜0.63で、中程度から大きめの変化と評価される範囲でした。
また、問題難易度指数(Difficulty Index、その問題がどれくらい解きやすくなったかを示す指標)が上がったことや、誤答の選択肢が選ばれる回数が減ったことから、学生の理解がより深まり、誤ったイメージや思い込み(誤概念)が減った可能性が示されました。
学生からは、体の構造を立体的にイメージする「空間認知(Spatial Awareness、体の中で骨や筋肉がどこにあるかを頭の中で思い描く力)」が高まったことや、触診(Palpation、体の表面から骨や筋肉などを手で触って確かめる診察方法)に対する自信がついたという報告がありました。

結論:今回の研究でわかったこと

2年目の筋骨格系の科目の中に、解剖の復習ラボを組み込むことで、多くのテスト問題で成績が統計的に意味のある形で良くなりました。また、解剖学で学んだ体の構造と、実際の臨床(Clinical Practice、患者さんを診て治療する場面)とのつながりを意識しやすくなり、触診への自信が高まる可能性があると考えられました。

実際の診察ではどう考えるか

解剖、触診、評価、そして症例を一緒に扱う復習セッションは、1回きりの講義だけの場合と比べて、知識を思い出す力や、記憶の定着を高める可能性があります。臨床教育の場では、画像(X線やMRIなどの医用画像)、模型(骨や関節の模型)、触診練習、症例検討(実際の患者さんのケースをもとに考える学習)を組み合わせて、継続的に統合された学習ができるよう、意図的に教育プログラムを設計することが大切だと考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

  • かわな いりなか 八事エリア
  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

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