ACL再建後早期に健側膝機能トレ追加で患側機能と恐怖心は改善するか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:ACL再建後早期に健側膝機能トレ追加で患側機能と恐怖心は改善するか?
  • 英語タイトル:Effects of contralateral knee functional training on knee function, pain, kinesiophobia, plantar load distribution, and stance-phase parameters after anterior cruciate ligament reconstruction: a single-blind, randomised controlled trial.

ここでは、前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい:Anterior Cruciate Ligament/ACL)という膝の中の靱帯を再建する手術を受けたあとのリハビリについてお話しします。
整形外科やリハビリテーション科の外来で、日常的によく出てくるテーマです。
専門用語はできるだけかみくだいて説明しますので、気楽に読んでみてください。

目次

研究の背景・目的

ACL再建術(Anterior Cruciate Ligament reconstruction/前十字靱帯再建術)のあと、特に手術後まもない時期は、手術した側の膝(患側)には強い負荷をかけないように制限することが多いです。
そのため、患側の太ももの筋肉が落ちてしまったり、膝の曲げ伸ばしなどの関節の動きが悪くなったりしやすくなります。
また、「またケガをするのではないか」という強い不安や恐怖が出ることがあります。これを医学的にはキネシオフォビア(kinesiophobia:動くことや運動に対する恐怖心)と呼びます。
この研究では、こうした筋力低下や関節機能の低下、再受傷への恐怖心といった問題に対して、手術していない側の膝(健側)のトレーニングを早い時期から追加することが役に立つかどうかを調べることが目的とされています。

調査の方法(対象など)

この研究は、単施設単盲検ランダム化比較試験(single-blind Randomised Controlled Trial/単盲検無作為化比較試験)という方法で行われました。
「単施設」は1つの医療機関で行ったという意味です。
「ランダム化比較試験」は、患者さんをくじ引きのような方法でグループ分けして、治療方法を比べる研究方法です。
「単盲検」は、評価する側(検査やスコアをつける人)が、どの患者さんがどのグループか知らない状態で評価する方法です。
この研究では、ACL再建術後5〜6週の患者さん40人を対象にして、健側膝の機能トレーニングを追加で行う「介入群」と、通常のリハビリを行う「対照群」に分けて比較しています。

研究の結果

膝の機能を評価する指標として、Lysholmスコア(ライショルムスコア:膝の痛みや不安定さ、日常生活での困りごとなどを点数化した評価法)を用いています。
このスコアの変化量は、健側トレーニングを追加した介入群では+12.45点で、患者さん自身が「良くなった」と実感しやすい変化の目安であるMCID(Minimal Clinically Important Difference/最小臨床的重要差)を上回っていました。
一方、対照群では+5.80点で、介入群のほうが統計学的に有意に大きな改善となっていました。
運動への恐怖心を評価するTSK-17(Tampa Scale for Kinesiophobia-17:運動に対する恐怖心を17項目で評価する質問票)でも、両方のグループでMCIDを超える改善がみられましたが、介入群のほうが恐怖心の改善が有意に大きい結果でした。
痛みの強さを0〜10などの数値で表すVAS(Visual Analogue Scale/視覚的アナログ尺度)では、両群ともMCIDを超える改善がありましたが、2つのグループのあいだの差は統計学的に有意とはいえない結果でした。

結論:今回の研究でわかったこと

ACL再建術後の早い時期に、手術していない側の膝(健側)の機能トレーニングを追加すると、膝の機能を表すLysholmスコアと、運動に対する恐怖心(キネシオフォビア)の改善が、MCID(患者さんが「変化を実感しやすい」とされる最小の変化量)を超えて、統計学的にもより大きくなる可能性が示されています。

実際の診察ではどう考えるか

実際の診察やリハビリの場面では、ACL再建術後まもない時期には、手術した側の膝に直接強い負荷をかけにくい患者さんも少なくありません。
この研究結果から、そういった場合に、健側の膝の機能トレーニングを早い段階から追加することで、手術した側の膝の機能や、運動に対する恐怖心を、脳や神経のはたらきを通じて(中枢経由で)ある程度補っていく戦略となる可能性が考えられます。
ただし、実際にどのようなリハビリ内容が適しているかは、ケガの状態や手術方法、全身の体力などによって変わりますので、個々の患者さんごとに主治医や理学療法士と相談しながら進めていくことが大切です。


参考文献

  • Effects of contralateral knee functional training on knee function, pain, kinesiophobia, plantar load distribution, and stance-phase parameters after anterior cruciate ligament reconstruction: a single-blind, randomised controlled trial.

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42387497/


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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