この記事の要点
- 日本語タイトル:股関節周囲痛リハで何が促進因子となり何が障壁となるか?
- 英語タイトル:Physical therapists’ experiences treating patients with hip joint-related pain: Facilitators and barriers to rehabilitation.
ここで取り上げる「股関節周囲痛(こかんせつしゅうい つう)」は、太ももの付け根あたりの痛みのことで、整形外科やリハビリテーション科の外来でよくみられる症状です。
この記事では、股関節の痛みでリハビリテーション(Rehabilitation、機能回復を目指す治療)を受けている方について、どんなことがリハビリを進めやすくし(促進因子)、どんなことがリハビリの妨げになりやすいか(障壁)を、できるだけ専門用語をかみくだいてお話しします。
研究の背景・目的
股関節周囲痛では、手術をしないで行う保存的治療(Conservative treatment、手術以外の治療)の一つとして、理学療法(Physical Therapy、運動や姿勢・動きの指導などを行うリハビリ)が長く続くことが少なくありません。
その結果、患者さんご本人も、担当する理学療法士(Physical Therapist、運動療法などを行うリハビリ専門職)も、思うように良くならないと感じて、もどかしさや不満を抱きやすい領域とされています。
このように、十分とは言えない結果(サブオプティマルな結果)につながりやすいことから、「何がうまくいく要因で、何がうまくいかなくなる要因なのか」を整理することが、この研究の目的です。
調査の方法(対象など)
この研究では、質的研究(Qualitative Research、数字ではなく言葉や体験を詳しく分析する研究)の一つであるフォーカスグループ法(Focus Group、少人数のグループで意見を出し合ってもらう調査方法)を用いました。
股関節周囲痛の患者さんを日常的に担当している理学療法士20名を対象に、オンラインでグループインタビューを行いました。
その話し合いの内容から、「リハビリが進みやすくなる要因(促進因子)」と「リハビリの妨げになりやすい要因(障壁)」を整理して抽出しました。
研究の結果
理学療法士が「リハビリを進めやすくする要因(促進因子)」として挙げたのは、主に次のような点でした。
まず、患者教育(Patient Education、病気や痛みの仕組み、治療の進め方などを患者さんにわかりやすく説明すること)です。
次に、エンパワメント(Empowerment、患者さんが自分の体や治療について主体的に考え、行動できるように支えること)、バイオメディカル介入(Biomedical Intervention、筋力トレーニングやストレッチなど、体の構造や機能に直接働きかける治療)も挙げられました。
さらに、多職種協働モデル(Multidisciplinary Collaboration Model、医師・理学療法士・看護師など、いろいろな職種が連携して関わる体制)や、セラピューティックアライアンス(Therapeutic Alliance、治療的同盟:患者さんと医療者が信頼関係を築き、同じ方向を向いて治療に取り組む関係)、そして患者中心ケア(Patient-Centered Care、患者さんの価値観や生活背景を大切にしながら治療方針を考えること)も、促進因子として重要とされました。
一方で、「リハビリの妨げになりやすい要因(障壁)」としては、気分(Mood、落ち込みや不安などの心理状態)、非現実的期待(治療でどこまで良くなるかについて、実際よりも過度に高い期待を持ってしまうこと)、通院困難(仕事や家庭の事情、交通手段などの理由で通院しづらいこと)、医師連携不足(医師と理学療法士の間で情報共有や方針のすり合わせが十分でないこと)、そして痛みのとらえ方(Pain Perception、痛みをどのように感じ、意味づけているか)が挙げられました。
結論:今回の研究でわかったこと
股関節周囲痛のリハビリでは、患者教育やエンパワメント、多職種協働、セラピューティックアライアンスなど、「患者さんと医療者が一緒に学び、協力して進めていくこと」が、リハビリを進めやすくする要因(促進因子)として働くと整理されました。
一方で、気分の落ち込みや不安、現実的ではない期待、通院のしづらさ、医師との連携不足などは、リハビリの妨げ(障壁)になりやすいとされました。
この研究では、バイオサイコソーシャル視点(Biopsychosocial Perspective、体の状態(バイオ)、心の状態(サイコ)、生活環境や人間関係(ソーシャル)をあわせて考える見方)での患者教育と、多職種による連携を強めることが、股関節周囲痛のリハビリを進めるうえで重要なポイントになるとまとめています。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診察やリハビリの場面では、股関節周囲痛に対して、運動の内容だけを考えるのではなく、初回の段階から患者教育を行い、どのくらいの期間で、どの程度の改善を目指すのかといった現実的なゴールを一緒に決めていくことが大切とされています。
また、医師・理学療法士・他の医療スタッフが情報を共有し、多職種で連携しながらサポートしていくことも重要です。
そのうえで、患者さんの気分や不安、痛みに対するとらえ方にも配慮しながらリハビリ計画に組み込んでいくことが、今回の研究結果から意識したい点といえます。
参考文献
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Physical therapists’ experiences treating patients with hip joint-related pain: Facilitators and barriers to rehabilitation.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42376982/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


